バーチャルYouTuber(VTuber)界の大手事務所『ホロライブプロダクション』の運営会社『カバー株式会社』が、公正取引委員会から下請法違反(やり直しの禁止)によって勧告を受けたことが判明し、ネット上で物議を醸しています。
公正取引委員会の発表によると、カバー社は遅くとも2022年4月から2023年12月にかけて、動画に使用するイラスト、2D・3Dモデルの作成を委託している下請事業者23人(8割がフリーランス)に、契約書に記載されていない無償のやり直しを計243回させていたことが分かったとのことです。
公正取引委員会はカバー社に対して再発防止を勧告するとともに、無償のやり直し分の対価を下請事業者に支払うよう求めています。
公正取引委員会の調査によれば、下請事業者が発注通りに納品をした後、カバー社は「髪の動きをもっと滑らかに」「体形のバランスが悪い」などと、発注時の仕様では必要だと分からない修正を何度もさせた挙げ句、修正が終わるまでは代金を支払わず、支払期日の遅延により発生した利息分約115万円も未払いだったとしています。
また、ある事業者は7回にわたり修正を要求されたうえ、経理処理忘れによって1年7ヶ月も代金を支払われなかったといい、これらの問題も下請法違反(支払い遅延の禁止)により是正するよう指導をしたとしています。
<↓の画像は、カバー社に対する公取委の勧告・指導の概要>
<↓の画像は、下請事業者に対する不当なやり直し・支払い遅延の一例>
そして、公正取引委員会の勧告を受けてカバー社は公式サイトで声明を発表し、一連の違反行為を謝罪したうえで、なぜこのような問題が発生したのかを説明しています。
仕様書などに記載されていない修正を何度も要求したことについては、「仕様書や指示書等で正しい言語化による発注が行われなかった結果、修正をご依頼する回数が多くなってしまったことや、完成までの期間が長期に渡ってしまったことなどでお取引先様へご負担ご迷惑をおかけしました」
としています。
また、支払いの遅延なども発生した理由については、「当社の事業が急拡大し取引件数が増大したのに対し、お取引先様の方々とのやり取りに抜け漏れや遅延が生じてしまっていたこと、及び社内体制の構築や社内研修が不十分であったことが原因となっております。」
と説明し、現在は従業員の採用や取引フローの見直し、社内研修を行うなどして改善を進めているとのことです。
そして、この問題に対してネット上では、
- Vtuber事務所最大手がこれじゃ、さすがに大問題だわな。ここまで来ると社員にもきちんと給料は支払われているのかと疑ってしまう
- 最大手事務所がこれだと、他もどうなんだろって思うなー。これだけじゃなくて、最近トラブルが多いイメージ。
やはりこういった新しいコンテンツの事業は、色々なところが怖いな - デザイン業界なんて未払い、無断利用、持ち逃げで泣き寝入りするなんて話は日常茶飯。ちょっと目立ってきたから見せしめに勧告受けたんだろうな。
そうはいっても、業界のリーディングカンパニーなわけで、発注契約の見直しとか、注意はしてほしいとこだね。 - クリエイト系の発注って細かな修正が山ほど出てくるのは常識で、なので契約の段階で修正何回までとか、1回何円とか厳密に決めなければなりません。
会社が小さいうちは、なぁなぁで双方相談で何とかなるけど、事業拡大して取返し付かなくなったのでは。
などの声が上がっています。
カバー社が運営のホロライブは、「世界最大級のVTuber事務所」を謳っている業界最大手の事務所で、英語圏をメインに活動しVTuber界ではトップのチャンネル登録者数(452万人)を誇る“サメちゃん”ことがうる・ぐらさん、次いで2位(350万人)の宝鐘マリンさん等が所属しており、カバー社の今年3月期の年間売上高は301.6億円、最終利益は約41.4億円でした。
そうした会社が、大半がフリーランスの下請事業者の足元を見て好き勝手やっていたようで、無償での修正や代金の遅延もあったとのことから、これまでに複数の通報が入っていたのかもしれません。
業界最大手事務所の運営会社でこうした問題が常態化していたということは、同業他社が同様の行為をしていたとしても不思議ではないとの声も上がっています。
公正取引委員会は、来月からフリーランスを保護するための新法の施行にあたり、4月からクリエイターの支援に向けた調査を行っているといい、その結果は年内にも公表予定としているのですが、まずは見せしめ?でホロライブの運営会社に対して勧告を実施し、これから業界全体で改善を図っていく流れになったらと思います。