『公正取引委員会』(略称:公取委)が26日、芸能事務所による所属タレントの独立・移籍などを妨害する行為に対して、独占禁止法にあたる恐れがあるとして問題行為をまとめた報告書を発表し、事務所に是正を促していくことが分かりました。
公正取引委員会は、公正で自由な競争を促進させ、経済の発達などを図ることを目的に、様々な業界の独占禁止法などに当たる行為を摘発、行政処分や刑事告発を行う国の行政機関です。
そんな公正取引委員会が、クリエイターたちが適切な契約を結べるように環境整備を進める中で、芸能事務所とタレントの契約に関して調査し、芸能事務所2,628社を対象にアンケートを行ったほか、芸能人や事務所、放送事業者などに対してヒアリングをして実態の解明を行ったといいます。
その結果、芸能人たちからは芸能事務所との契約について、
- 退所の申し出が受け入れられず、退所までに5年以上かかった。退所後も様々な嫌がらせを受けた
- 心身に限界を感じ退所の意向を伝えたら、『辞めたら潰すぞ。辞めると芸能活動ができなくなり、実質引退になるが大丈夫か?』と告げられた
- 退所に向けた話し合いをしている中、ワガママな芸能人であるかのような事実ではない悪評を流された。
- 元所属事務所が自分との共演はNGだと取引先に伝え、仕事がなくなった
- 元所属事務所から移籍の承諾を得たが、移籍予定先の事務所に悪評を流された。
その結果、移籍予定の事務所から移籍を諦めることを提案され、移籍が白紙になり、そしてフリーで活動することを余儀なくされた - 退所を公表しようとしたところ、事務所から「公表したら、関係者の不祥事を世間に言わなければいけない」と脅された。
理由が理解出来なかったが、何をされるか分からず指示に従った
など様々な問題の報告が上がり、中には事務所移籍にあたり高額な移籍金を要求されたケースもあったとしています。
これに対して公正取引委員会は、芸能事務所側が立場を利用して芸能人に不利益を与えていることから、「優越的地位の乱用」などに当たる恐れがあるとしています。
また、芸能事務所が退所した芸能人に対して、これまで使用していた芸名、グループ名などの使用を制限しているケースもあり、ある芸能人は「元所属事務所から『芸名の権利はうちがもっている』と告げられ、改名した」と回答したそうです。
芸能人が、芸名など使用継続を求めているにも関わらず、それを断じて認めないことは「取引拒絶」に当たる恐れがあるとしています。
事務所間での「引き抜き禁止」という認識も、芸能人に共同で移籍制限を行った場合は「不当な取引制限」などに該当し、複数の事務所が結託して移籍を妨害する行為は、談合やカルテルに当たる可能性があるとの見解を示しています。
公正取引委員会はこれらの行為が独占禁止法に当たると見て、来年にガイドラインを策定して改善を促すといい、調査結果は各事業者に周知し、主要な事業団体に対して注意喚起をしたそうです。
これに対してネット上では、
- 育てた恩があるのは分かるけど事務所側はやりすぎ 本名ですら使えないとかおかしい
- 能年玲奈が帰ってくるかな
- 能年玲奈さんの件は本当におかしいと思ってた。事務所が付けた名前ならまだ理解できるが、本名を使わせないとか反社の人の発想だと思う。
- 移籍・独立が簡単になると小さい事務所全部潰れそうだが
- 売り込みに使った時間や費用とか考えると、元を取る前に辞められた場合…事務所的には辛いってこともあるわな
- 安室さんも、もっと前に引退したかったけど引退させてもらえなかった。結局ライジングから離れたし、そのときにも洗脳疑惑とか不倫疑惑とか、出されて嫌がらせされてた。
- 公正取引委員会、仕事遅すぎる 何やってんだよ いつまで同じような案件こねているんだよ
などの声が上がっています。
公正取引委員会は過去にも、元『SMAP』の稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんが旧ジャニーズ事務所を退所後にメディア露出が激減する中で、旧ジャニーズ側が各テレビ局などに圧力をかけているとの情報が寄せられたことで調査し、結果は具体的な圧力や、直ちに違反となる行為は認められなかったとしながら、独占禁止法違反に繋がりかねない状況があったと認定し、旧ジャニーズに対して注意を行いました。
そして、今度は芸能界の契約問題にメスを入れるそうで、芸名使用を巡るトラブルについては度々発生しており、女優・のんさんは契約を巡って『レプロエンタテインメント』とトラブルになった末に独立し、デビュー以来使用していた本名でもある芸名「能年玲奈」を捨てて、のんに改名しました。
レプロとのんさんが結んだ契約書には、名前の権利関係ついて双方が協議し決定すると書かれているものの、レプロ側が「契約期間の終了後も、能年という名前は使えない」と通告してきたことを受け、今後さらにトラブルになることを回避するために、自主的に改名をしたとのんさん側の弁護士が明かしています。
2年前には歌手・愛内里菜さんが、元所属事務所『ギザアーティスト(GIZA ARTIST)』との間で芸名使用を巡って裁判沙汰となり、東京地方裁判所は事務所側の主張を退け、愛内さんが芸名を使用するのは問題ないとの判決を出しています。
最近では演歌歌手・氷川きよしさんが、以前から使用している「Kiina(KIINA)」という名称を元所属事務所『長良プロダクション』が商標登録申請し、最終的に氷川さん側がそれを承諾したことで決着が付き、氷川さんは独立後に別名に“ドット”を入れて「KIINA.」という表記に変更しています。
事務所間での引き抜き行為の禁止などについては、『ホリプロ』『ワタナベエンターテインメント』など、複数の大手芸能事務所も加盟している業界最大の団体『日本音楽事業者協会(音事協)』が禁じており、音事協は引き抜きによるトラブル防止などを目的に設立された団体でもあります。
タレント育成に注ぎ込んだ費用を回収する前に移籍されてしまうと、事務所側は不利益を被ることになるため、事務所移籍のハードルを上げることも必要だと思いますが、複数の事務所が結託して悪質な妨害行為をし、潰しにかかるというのは大きな問題で、公正取引委員会が引き続き厳しく取り締まっていき、業界全体が少しでもクリーンになるように是正を促していってもらいたいです。