2004年アテネ五輪から2016年リオデジャネイロ五輪まで4大会連続で金メダルを獲得している女子レスリングの伊調馨選手(いちょう・かおり 33歳)が、『日本レスリング協会』の強化本部長・栄和人さん(さかえ・かずひと 57歳)から「陰湿なパワハラ」を受けていることを週刊誌『週刊文春』に激白しています。
栄和人さんは現在、全日本女子レスリングヘッドコーチと至学館大学(旧・中京女子大学)レスリング部の監督を務めており、これまでに“霊長類最強女子”こと五輪3連覇の吉田沙保里選手のほか、伊調馨選手、妹の伊調千春選手、小原日登美選手、登坂絵莉選手、川井梨紗子選手、土性沙羅選手など、数多くの五輪メダリストを生み出してきました。
それだけにレスリング協会では絶大な力を持っているそうなのですが、伊調馨選手と栄和人さんの双方と親交が深いレスリング関係者によると、栄さんの嫌がらせ行為が始まったのは2010年ごろからだったようです。
伊調馨選手は2008年北京五輪の翌年から栄和人さんの元を離れ、さらなる高みを目指して全日本男子のコーチでアテネ五輪の銅メダリスト・田南部力コーチ(たなべ・ちから 42歳)の元で男子選手と一緒に練習を積み重ねていたそうです。
<↓の画像は、2008年北京五輪時の伊調馨選手、栄和人さんの写真>
このような環境の変化をした後から嫌がらせ行為が始まり、嫌がらせはエスカレートするばかりだといい、田南部力コーチは左遷され、伊調馨選手は練習場への出入りを禁止されるという処分を受けたそうで、伊調選手も「このままでは東京五輪はとてもじゃないけど目指せない。」と話すほど深刻な状態にあり、すでに1年以上も試合から遠ざかっているとのことです。
1月18日には、内閣府の『公益認定等委員会』へ1通の告発状が提出されたそうで、そこには栄和人さんによる伊調馨選手に対するパワハラ行為が記されていたといい、その告発状には大きく分けて以下の3つのパワハラが記されていたようです。
- 伊調馨選手が師事する田南部力コーチに対する不当な圧力
- 伊調馨選手の男子合宿への参加禁止
- 伊調馨選手がリオデジャネイロ五輪まで練習拠点とした『警視庁レスリングクラブ』への出入り禁止処分
<↓の画像が、『公益認定等委員会』に提出された告発状の写真>
こうした告発状が寄せられていることを知った『週刊文春』の取材班は伊調馨選手に直撃取材を敢行したところ、この件に関して30分にわたって取材に応じてもらえたそうで、2年後に迫る東京五輪に向けた練習がままならない状況にあるという話について聞くと、「練習……そうですね、自分が求めていけば、練習させてくれるところはたくさんあると思うんですけど、私が(練習に)行ったことで、栄監督による圧力が周りの方にかかるというのはちょっと懸念している部分ではあるので。うーん、『来て欲しい』って言って下さる方はたくさんいるんですけど、『私が行ったらどうなるのかな』って……」
と答え、栄和人さんからの圧力について言及しています。
さらに、練習のために練習場にも行けない状況なのか聞くと、「現役を続けるとなると、栄体制の元でやるしかないので、また色んなことを我慢しながらやっていくとなると……。朝練とか午後練も練習環境がしっかり整わないと、なかなか腹をくくれない部分があります」
と話しています。
なお、『週刊文春』が栄和人さんに取材したところパワハラの事実を否定し、「(東京五輪に)出たければ出ればいいだけの話」などと答えたそうなのですが、同誌は3月1日発売号で伊調馨選手のインタビュー記事や栄さんの直撃取材の内容、告発状の中身などを詳しく伝えるとしています。
そして、この報道に対してネット上では、
- 栄氏と他の選手の仲の良さはよく報道されるけど、伊調選手との仲はあまり報道されてないですね…。こんな関係だったとはビックリです。
- 本当なら大事だ。あれだけ実績あったら誰も何も言えない。それにしても、周りに気を遣って練習がままならない伊調が不憫だわ。
- この監督、伊調には冷たい感じが画面から見てとれた。今回の話がマジなら大変なスキャンダル
- 権力を持つと人って変わるね。早く人事異動しないとダメだね。もし変わらなかったら最悪オリンピックボイコットもありえるかも
- 本当に?何のために?ちょっと信じられない。強化本部長として得なことは一つもないぞ。そんなに小さな男には見えなかったがなぁ。ちゃんと裏は取っているんだよね。
- 二人の間に何があったのだろうか?ちょっと信じられない思いだ、もし事実なら栄氏の責任問題になる、強化本部長の立場を利用して特定選手に圧力をかけるなんて、あってはならない。
- これはキッチリと解明せなあかんな。後々、他の選手にも影響する。結局、権力を持つと人間が変わってしまうのかな。栄コーチは、バラエティに出ている時は、オモロイおっさんやと思ってたけど
- スポーツ界やはりドロドロしてるんだね 伊調さんオリンピック大丈夫かね なんか今後凄く揉めそう
などのコメントが寄せられています。
伊調馨選手と栄和人さんの間に微妙な距離感があるという指摘は以前から上がっており、2016年のリオデジャネイロ五輪では、伊調選手が金メダルを獲得した時に栄さんは駆け寄らず、他の選手と対応が違ったと指摘されていました。
<↓の画像は、リオデジャネイロ五輪の時の写真>
そうした距離感の背景には色々なトラブルがあったようで、どこまで本当の話なのかは定かではありませんが、伊調馨選手本人がわざわざ『週刊文春』の直撃取材に応じているということは、それほど事態が深刻なものということなのでしょうね…。
栄和人さんは女子レスリングを大きく盛り上げた立役者ということから、メディアへの露出量も非常に多く、練習時は厳しいながらも選手たちへの愛が感じられる良い監督だなと思っていただけに、告発文の内容などが全て事実だったら非常にショックですし残念でなりません。
伊調馨選手は前回のリオデジャネイロ五輪で、女子個人としては史上初の4連覇達成という偉大な記録を作っており、5大会連続金メダル獲得に期待が集まっていることから、今回報じられた問題に関しては早急に対処してほしいところですが、栄和人さんはレスリング協会で大きな影響力を持っているとのことから、事態はそう簡単には変わらないのでしょうか…。