1日に行われたボクシングのWBC世界バンタム級タイトルマッチを行った山中慎介選手(やまなか・しんすけ 35歳)が、試合後に行った会見で現役引退を表明しました。
山中慎介選手は2011年にWBC世界バンタム級王者となり、2017年3月までに12度の防衛に成功しましたが、同8月に行われたタイトルマッチでメキシコのルイス・ネリ選手(23)と対戦し、プロでは初黒星となる4ラウンドTKO負けで王者陥落となりました。
なお、試合後に結果が出たドーピング検査でネリ選手から禁止薬物の陽性反応が出たことにより、山中慎介選手はWBC世界バンタム級1位にランクインし、WBC側からの再戦指令によって3月1日にタイトルマッチが実現しました。
<↓の画像が、WBC世界バンタム級タイトルマッチを行った山中慎介選手、ルイス・ネリ選手の写真>
再戦が決定したネリ選手は、試合前日の計量でバンタム級の規定体重(53.52kg以下)を1.3kgオーバーしていたことから試合前に王座剥奪となっており、もし山中慎介選手が試合に勝てば王座に返り咲き、ネリ選手が勝利もしくは引き分けてもバンタム級王座は空位という条件で行われました。
そして、1日に両国国技館で行われたタイトルマッチは多くのボクシングファンの注目を集めましたが、1ラウンドで1回、2ラウンドで3度のダウンをカウントされてTKO負けとなり、約200日ぶりに行われた再戦で王者復帰とはなりませんでした。
この試合後に会見を行った山中慎介選手は、体重オーバーだったネリ選手について「僕より強かったというだけ。本当に体も柔らかくていい選手。ただ、ルールがあるので、本当に人として失格だなと。イラつきが収まらなかった。これからはちゃんとしてほしい。ボクシング界全体で厳しくしてほしい」と苦言を呈しています。
<↓の画像が、試合後に会見した山中慎介選手の写真>
また、パンチの威力に差はあったかという問いに対しては、「利くパンチは見えないが、それをもらってしまったので、ちょっと慌てた部分ある。3回倒れているので、パンチは以前よりは感じた。前の試合よりは感じた」「(体重と関係している?)全くないとは言えないが、だからこそボクシング界全体のルールを厳しくしないとファンも納得いかない」と語っています。
自身の今後については「もちろんこれが最後です。これで終わりです」と現役引退を表明し、試合前から今回のタイトルマッチが最後だと決めていたのか聞かれると、「今後についてというのを全く考えないようにしていた。それを考えることによって自分の実力も落ちるような気もしてた。はっきりと決める感じではなかったが、何も考えずにいた」と答えています。
会見の最後には、これまで応援してきてくれたファンやジムの関係者らに感謝の言葉を述べていたのですが、山中慎介選手の現役引退表明を受けてネット上では、
- なんかスッキリしない。ルールを守らない体重増の失格選手をリングに上げたらダメでしょう。山中選手の不戦勝、ネリは無期限ライセンス停止とかにしないと。身体をルールの範囲内で作ってきた山中選手が気の毒だ。
- これがイーブンの試合だったらまだしも、こんな終わり方は不憫でならない。金さえ入ればドーピングと体重超過も大目に見る、こんなボクシングなら廃れてしまえ。
- このメキシコ人が体重も狙い通りオーバーの万全の状態で、筋肉まで減量してこれにかけてきた山中選手を踏みにじって予定通り倒した。もともとこの階級は捨てる予定で、無敗の記録で階級を上げてタイトル挑戦して王者になるシナリオを描いていたんだと思う。なんか、やりきれないよ。この前のドーピングも確信犯的にやっていたことが分かったよ。
- もう35歳、凄いチャンプだった。しかしドーピングの上体重オーバーなネリに試合をさせるとかスポーツとして有り得ない。ボクシングというスポーツを侮辱している
- スーパーバンタムなら、日本人結構ランカーいるよな。また来る気なら誰かに蹴散らされればいい。その前に、ネリが王座獲れるのかが問題だし、またペナルティー来るかもね。メキシコの方でも非難浴びているみたいだし。山中さん、ネリにこだわったのが裏目に出てしまった。悔しい以上に気持ちが切れたとしたら、あまりにも…ここのところの帝拳絡みのドタバタ劇、何とかならないのか?しっかりしてくれ。
- フェアーでもなければ、この試合にタイトル云々を絡めるのも筋違い。本来なら計量失敗した時点で終わった話。ても興行だからやってしまうボクシングの闇。
- 内山もそうだったけど、全盛期の頃の無敵の強さを知っているファンにとって、こういう試合はショックです。山中はルール違反の相手によく頑張ったと思います。お疲れ様でした。
- 本当であれば前回の負けで引退が決まっていたはず。ドーピングの問題も無ければ山中も若くて強い相手に負けたと納得も出来てた。ほんと今回のタイトルマッチは意味が無かった…。
などのコメントが寄せられています。
山中慎介選手は昨年8月の防衛戦でもし勝利していれば、具志堅用高さんが1980年に記録した13回連続世界王座防衛記録に並んだのですが、ドーピングで陽性反応が出たネリ選手に敗れ、さらには再戦では相手が体重オーバーというまたしても公平ではない条件のもとで試合が行われ、山中選手はもちろんのことファンらも納得がいかずに怒りをあらわにしています。
試合の解説を務めた後輩でWBA世界ミドル級王者の村田諒太選手(32)も怒りをあらわにし、「僕も相手が(ミドル級で2.5kgオーバーの)75kgやったらやりたくない。でも興行を潰すわけにもいかないし、逃げられない。その中で戦う男と、体重オーバーして勝ってる男とどっちがかっこいいか。ボクサーだからわかる恐怖に負けずに戦った山中さんはかっこいい。それだけ」「計量のルールを厳正化しないと、どっちにしろ、しこりが残る。計量オーバーして興行にならないようになるなら、訴訟でも起こせるとか、システムを変えないと。何かを起こしたら厳罰化するとかしないと(ボクシングが)衰退してしまう」
とルールを見直していく必要があると語っています。
今後もこのような公平ではない条件のもとで試合が行われないよう、もし守れなかった場合には、それ相応のペナルティを与えるなどしなければ今後も同じようなトラブルが恐らく発生し、選手やファンらも嫌な思いをすることになるため、ルール、罰則などを改めることを協議していく必要がありそうです。
山中慎介選手の左は“ゴッドレフト(神の左)”と呼ばれ、2011年から昨年までの約6年にわたってWBC世界バンタム級王者として君臨するなど、素晴らしい成績を残したボクサーだっただけに、このような試合が現役最後というのは納得ができないという声も多く上がっているのですが、山中選手は今回がラストとしているため、これからの活動に期待をしていきたいですね。