パリ五輪が開幕し、選手らに対する誹謗中傷行為が問題視される中で、パリパラリンピックのアーチェリー日本代表に選出されている重定知佳選手(しげさだ・ちか 41歳)が、同競技の選手に対する中傷行為で裁判沙汰となり、損害賠償命令が下されたことで物議を醸しています。
重定知佳選手を訴えたのは、パラアーチェリーの小野寺朝子選手(おのでら・あさこ 48歳)で、ブログのコメント欄で中傷され、精神的苦痛を受けたとして損害賠償請求訴訟を起こし、東京地方裁判所は約124万円の支払いを命じました。
<↓の画像が、裁判を起こしたパラアーチェリー・小野寺朝子選手の写真>
裁判に至るまでの経緯は、東京パラリンピックの代表選考中だった2021年1月に、小野寺朝子選手のブログに匿名で、「いい加減もう東京パラも無理だし代表入りも無理なの気づきませんか? 悪あがきもほどほどにした方がいいですよ」「ルール違反していない? してるから言ってるんですけど」「代表選手になりたいならルールを守るのは最低限のマナー」「ルールを守れないような人、代表になんてなれないです」
などのコメントが寄せられたそうです。
<↓の画像は、東京パラリンピック出場の重定知佳選手の写真>
これに対して小野寺朝子選手は、投稿者を特定するため裁判所に情報開示請求をしたところ、重定知佳選手が書き込んでいたことが発覚し、小野寺選手は事実無根の書き込みにより名誉を毀損されたとして、約169万円の損害賠償を求めて民事提訴しました。
重定知佳選手側は裁判で、代表選手として相応しくないという感想を述べたもので公益性があり、小野寺朝子選手が実際にルール違反をしていたなどと主張していました。
<↓の画像が、重定知佳選手が匿名でブログに投稿した中傷コメントの写真>
しかし、重定知佳選手はルール違反を訴えながらも、競技団体などに通報しておらず、小野寺朝子選手のブログに書き込むだけだったほか、小野寺選手が出場した大会でルール違反を注意されたという事実もありませんでした。
そして、東京地裁は重定知佳選手が書き込んだコメントの内容について「全くの虚偽」「小野寺選手への攻撃が目的で、真実だとは言えない」とし、「投稿は、原告に対する反感・攻撃が全面に出たもので、その目的に公益性はない」「名前を隠して確実に目の届くブログにコメントをするのは卑劣というほかなく、競技成績についてまで挑発的、嘲笑的に言及しており、悪質性は相応に高い」「身に覚えのない投稿を立て続けにされた上、ライバルによる投稿と知った精神的苦痛は相当なものと認められる」
として名誉毀損を認め、約124万円の損害賠償を命じました。
重定知佳選手側は、この判決を不服として控訴する意向を示しています。
裁判終了後に小野寺朝子選手は弁護士と共に記者会見を行い、「重定選手が書き込んだと開示された時はとても信じられず、何かの間違いだと思いました。この判決が出て、いけないことはいけないのだと気付いてもらいたい」「モヤモヤした気持ちで過ごしていた。いけないことをいけない、と裁判所が判断をしてくれたのはうれしく思う」「代表の自覚があれば、このような書き込みはできない。このような人が日本の代表として、パラリンピックに出ることはとても残念に思います」
などと語っていました。
このトラブルに対してネット上では、
- 悪口を書き込んだ人のほうが代表なのか…そりゃ複雑だな
- 3年前のが今ようやく判決なんだ 被害者は割に合わない戦い
- こんな事する人応援出来ないね
- こんなんでパラアーチェリーチームを応援する国民はどれくらいいるのかな。私は応援しないわ
- 賠償額から言って白になることはないでしょう。協会は本人から聞き取りをするなどして、事実確認をした上で出場停止にするのが正しい判断と思う
- 控訴せず即刻、謝罪をし支払いも行いパラも辞退すべき。協会も代表から取り消しを行うべき。
控訴して持論を展開し正当化の上でパラ出場など誰が応援できる? - 代表選出に疑問。問題が明るみになった時期は随分と遡る。競技関係者内では周知の事であったろう。
協会も代表選考前に把握していたはずで、それでも代表に選んだ経緯の説明が求められる。
などの声が上がっています。
重定知佳選手はパリパラリンピックだけでなく、東京パラリンピックでもアーチェリー日本代表に選出され、個人リカーブで7位、混合リカーブで5位入賞を果たしており、国内でトップクラスの実力を持つパラアーチェリー選手です。
一方の小野寺朝子選手も国内最高峰の大会で好成績を残しており、『日本身体障害者アーチェリー連盟(JPAF)』の女子リカーブでランキング2位、重定知佳選手が同ランキング1位となっています。
小野寺朝子選手にとって重定知佳選手は最大のライバルで、これまでに複数の大会で2人は対戦しており、昨年開催の『JPAF杯』や『文部科学大臣杯争奪 全国身体障害者アーチェリー選手権(フェニックス杯)』といった全国大会で対戦し、重定選手が優勝していました。
そんな重定知佳選手が匿名で、ライバル選手のブログに中傷コメントを書き込んでいたというのは驚きですが、2018年にはカヌー・スプリントで世界選手権にも出場していた鈴木康大選手(38)が、ライバルの小松正治選手(32)の飲み物に禁止薬物(筋肉増強剤)を混入させていたことが判明し、この問題で8年間の資格停止と連盟からの除名処分を下されるという騒動がありました。
また、2年前には『埼玉西武ライオンズ』の源田壮亮選手(31)と妻で元『乃木坂46』の衛藤美彩さん(31)に対して、SNSを通じて誹謗中傷メッセージを送っていた人物が、当時チームメイトの山田遥楓選手(27)の妻だったことが判明し物議を醸しました。
直近では4日に、お笑いタレント・YouTuberのフワちゃん(本名=不破遥香 30歳)が、大ブレイク中のピン芸人・やす子さん(本名=安井かのん 25歳)に「死んでくださーい」などと暴言を吐き、現在も大炎上状態が続いています。
身近な人物が、一方的に相手を恨むなどして攻撃を仕掛けるといったことも珍しくないのですが、ライバルに中傷行為をしていた選手が、2大会連続でパラアーチェリー日本代表に選出されるというのは疑問で、こうした問題が発覚した以上は素直に応援することはできません。
重定知佳選手側は控訴するとしているので、裁判は今後どうなるかはまだ分かりませんが、一審では重定選手の行為は卑劣で悪質な行為だと認められていて、スポーツマンシップなどに反していると思いますし、この判決を受けて『日本パラスポーツ協会 日本パラリンピック委員会(JPC)』は重定選手の大会出場について改めて協議を行い、予定通り出場させるにしても会見などで説明を行う必要があるのではと思いますね。