世界的人気の歌手テイラー・スウィフトさん(27)が、元ラジオDJのデビッド・ミューラーさん(55)にお尻を触られたとして、損害賠償金1ドルを求めていた訴訟で、裁判所はテイラーさん側の訴えを認め、1ドルの支払いを命じました。
このセクハラ事件は2013年6月に、テイラー・スウィフトさんがアメリカコロラド州デンバーで行ったコンサート前のイベントで起き、当時ラジオDJをしていたデビッド・ミューラーさんが恋人を連れてイベントを訪れ、テイラーさんと3人で一緒に写真撮影をした際に、テイラーさんのスカートの中に手を入れ、お尻を掴んだと訴えていたものでした。
<↓の画像が、コンサート前に撮影のスリーショット写真>
テイラー・スウィフトさんのスタッフはセクハラ被害を聞いた後に、デビッド・ミューラーさんがDJを務めるラジオ局に被害を報告し、ラジオ局側はミューラーさんを解雇しました。
ミューラーさん側はこれに対し「セクハラ行為はなかった」「テイラーの事実に反する訴えのせいで仕事を失った」として、2015年9月にテイラー・スウィフトさんと家族、スタッフらを名誉毀損で訴え、失職期間の年収2年分相当の300万ドルの支払いを求めていました。
その一方で、テイラー・スウィフトさん側はセクハラ被害を受けたとして逆告訴し、損害賠償金として1ドルの支払いを求めていました。
<↓の画像が、裁判で争っていたテイラー・スウィフトさんとデビッド・ミューラーさん>
賠償金がたった1ドルの理由について代理人は、「彼女はただ、誰かが自分の体を触ろうとしてきたら『NO』と言っていいんだと伝えたいだけなんです。女性の尻を触ることは暴行であり、どんな場合においても間違っています。その女性が裕福か貧乏か、有名かそうでないかは関係ありません。どんな女性であっても、こんな被害にあってはならない権利があるはずです」と、賠償金目的ではなく、性的な被害を受けた女性らが泣き寝入りしない姿勢を示すため反訴したと説明していました。
6日間に及んだ今回の裁判では、判事がデビッド・ミューラーさん側の申し立てを棄却し、「解雇はテイラーのせいと証明できない」「テイラーはミューラーの解雇に責任はない」と語り、一方のテイラー・スウィフトさん側の主張については8人の陪審員たちが全員一致で訴えを認め、完全勝訴となりました。
テイラー・スウィフトさんはこの判決受けてコメントを発表し、「裁判官と陪審員の皆さんが、慎重に検討してくださったことに感謝したい。私のために闘ってくれた弁護士たちや、性的虐待の被害者たち、そして、特に4年間にわたる厳しい試練や、2年にわたる長い裁判プロセスを支えてくれた皆さんに感謝したい」としています。
また、「このような裁判で、自分を弁護するために莫大なコストを背負う能力や特権が自分にあることを知っています。性的虐待に陰で苦しんでいる人々を助けることが、私の希望です。近い将来、そのような人々を支援する複数の団体に寄付するつもりです」とも明かしています。
そして、この裁判に対してネット上では、
- このおっさんはアメリカ版みのもんただね。
- か、かっこよすぎるやろ~。基金まで・・。問題をきちんと理解してるんだなあ。このオサンはテイラーにやるくらいだから、これまでもいろいろやってるだろう。何もしなかったらこれからも犠牲者でてただろうし。この業界で他にセクハラをやっている汚いオサン達にもインパクトあったんじゃないかな。
- 1ドルというところが逆にインパクトを与えたし、誰もが正義のためだったとわかる。賢いし、かっこいい
- テイラーはそういう人達に勇気を与えたと思うけど、日常的に行われているパワハラやセクハラにメスを入れる事は一般女性には難しい。
- 自分がアクションを起せば、セクハラというものに注目が集まるってわかってる。そしてそのことが抑止力につながることも理解してる。勇気ある行動に拍手
- これは上手いやり方。自分の立ち位置を理解した上で、利用して主張を通してる。
などのコメントが寄せられています。
今回のような事件はアメリカだけでなく世界各国で起きており、テイラー・スウィフトさんの行動は多くの女性に訴える勇気などを与え、とても大きな意味のある行動だったと思います。
しかし、セクハラで訴えるにしても、それを証明するのも困難ですし、どれ程の被害に遭っていたのかどうかで慰謝料として得られる額は大きく変わり、裁判の費用や労力なども考えて泣き寝入りするというケースが多いとみられます。
国内のセクハラ事情については厚生労働省が昨年、過去にセクハラを受けたことがある女性のうち6割以上が泣き寝入りしているという調査結果を発表しており、約1万人を対象に調査を行ったところ、セクハラ被害を受けたと回答したのは28.7%で、被害の対応については「我慢した、特に何もしなかった」が63.4%と最も多い割合となっています。
その一方、上司や会社の窓口に相談したのは13.5%で、その後どのような対応があったかについては、「特段の対応はなかった」が22.7%、他にも「上司や同僚から嫌がらせを受けた」は5.7%、「解雇、退職を強要された」は3.6%だったとしています。
テイラー・スウィフトさんもこうした状況を理解し、今後は女性たちの訴えを支援している団体などに寄付を行っていく意向を示しており、今回のセクハラ事件をきっかけに少しずつ、女性たちが声を上げやすい環境になっていくことに期待したいですね。