ドーピング違反問題で、騒動に発展していたフィギュアスケート・ロシア代表のカミラ・ワリエワ選手(15)が、引き続き北京冬季五輪に出場することが認められ、『スポーツ仲裁裁判所(CAS)』が出した結論、理由を巡ってネット上で物議を醸しています。
カミラ・ワリエワ選手は昨年11月にグランプリシリーズ第6戦『ロシア杯』で優勝し、同12月開催の代表選考に関わる『ロシア選手権』では、自身が持つ世界最高得点を上回る点数で初優勝を飾りました。
また、2月6・7日に行われた北京五輪の団体戦では、ショートプログラム・フリー共にトップの演技を披露し、金メダル獲得に大きな貢献をしました。
しかし、『ロシア選手権』に出場時に『ロシア反ドーピング機関(RUSADA)』が採取した検体から、禁止薬物「トリメタジジン」が検出されたことが2月8日に判明、五輪期間中の検出は無かったものの、規定によって暫定的な資格停止処分が下され、全ての大会への出場が禁止となり、団体戦のメダル授与式も延期となりました。
これに対してカミラ・ワリエワ選手サイドは、すぐさまRUSADAに異議申し立てを行い、その日のうちに暫定の資格停止処分解除が決定しました。
ちなみに、カミラ・ワリエワ選手の体内から検出されたトリメタジジンは、狭心症や心筋梗塞などの治療に使用され、この成分は血管を広げ、心筋のエネルギー代謝を改善する作用があり、アスリートが使用した場合に血流増加によって、持久力や回復力アップなどの効果が得られる可能性があるそうです。
こうした誤飲の可能性が低い禁止物質を摂取しながら処分解除が決定し、翌日の11日には、『国際検査機関(ITA)』はカミラ・ワリエワ選手がドーピング検査で陽性になっていたことを公表しました。
『国際オリンピック委員会(IOC)』と『世界反ドーピング機関(WADA)』は、ワリエワ選手の処分解除を不服としてスポーツ仲裁裁判所に提訴し、12日には『国際スケート連盟(ISU)』も提訴しましたが、14日に申し立ての棄却が発表され、15日に行われる女子シングルのショートプログラムに出場できることになりました。
<↓の画像は、カミラ・ワリエワ選手のドーピング問題を巡る経緯>
スポーツ仲裁裁判所の事務局長は棄却理由について、「まずこのアスリートは16歳未満であり、まだ規定の下では『要保護者』の人物。また昨年12月に行われた検査で、アスリートを出場禁止にすると言うことは、この選手に対して害をもたらすと判断した」
と説明し、処分解除は妥当な判断だとしています。
また、昨年12月の検査結果通知が遅れたことについて、「アスリートの責任ではないし、通知の遅れは非常に残念。アスリートに影響を与え、そしてこの冬季大会の組織者にも影響を与える。検査手続きが1週間、もしくは10日間で通知を行えるような形で完了すれば、このようなことは起こっていない」
と指摘しています。
この裁定にはスポーツ法の専門家の仲裁人3人が関わったといい、「外部からのプレッシャー、影響をさらされることなく、この判断を下した」
としています。
そして、カミラ・ワリエワ選手の年齢、検査結果が出たタイミングなどを理由に処分解除が認められ、予定通りシングルに出場することが決定したことに対してネット上では、
- 15歳なら自分を取り巻く今の環境も理解できるはず。「年齢も考慮」などという理由で出場、結果勝利したとしても本人が辛い思いをするだけでしょ
- 要保護と言っておきながら、ドーピングを容認するのは何なんだろう。
むしろドーピングから選手を守る為、ドーピングしたら未成年だろうが出場停止になったりと厳しい処分があるという事を示さないとダメなんじゃないか。 - 彼女の演技は素晴らしいとは思うし、他の選手とは確実に一線を画すとは思うが、この騒ぎで彼女の演技を純粋な競技として見られなくなってしまったのが残念。
この大会でドーピングは無かったとしても、ドーピングによる代表権取得だと考えると、どれほど高い点数を出してもやはりメダルに値するとは思えない。 - あり得ない。15歳で保護の対象だからドーピングが見逃されるなんて。ルール違反があれば出場停止になるのに年齢は一切関係ないはず。
これでは16歳以下に関してはドーピング違反は問われないと公に認めたも同然で今後、ロシアはますますやりたい放題になるのは目に見えている。
彼女を出場させることがさらなるドーピングによる犠牲者を増やすことに繋がるのは間違いない。 - 年齢を理由に擁護すべきは“彼女の責任ではない”という部分であって、出場資格は剥奪すべき。
今後、ドーピングを強要されない環境で立ち直っていくことサポートしていくのがあるべき姿じゃないのか?
現状はルールを破っているのだから厳格に処分すべき。大人がそれを許したら今後を担う若いアスリートにどういう影響を与えるのかわかっていない。
などの声が上がっており、この裁定に疑問や批判の声が噴出し大炎上状態が続いています。
世界反ドーピング機関の規定では、16歳未満の選手は処分の軽減など柔軟に対応する要保護者となり、昨年12月の検査で五輪出場を禁止した場合に甚大な損害を与えるとして、処分解除は妥当との結論を出したそうですが、これに対してアメリカの五輪委員会も落胆していることを明かし、「スポーツの品位を守り、アスリートとコーチ、全ての関係者を最高水準に保つのはIOCの集団的責任です。アスリートは公平な競争の場で競い合っていることを知る権利があります。残念ながら、今日その権利が否定されました。これはロシアによって組織的に充満するクリーンスポーツの軽視の新たな章です」
との声明を出しています。
また、スポーツ仲裁裁判所に提訴した世界反ドーピング機関は裁定を受け入れるとしつつ、「WADAの規定に沿っていない。失望している」「未成年を含む要保護者でも、暫定資格停止処分の例外にすることは許していない」
と指摘しています。
たった2ヶ月前に明らかな違反行為をしていたにも関わらず、年齢やタイミング等を理由に資格停止処分が解除され、試合に出場できるというのは納得できるものではなく、出場が許されたとしても自ら出場を辞退するべきとの声や、カミラ・ワリエワ選手の演技については採点の対象外にし、公平性を保つ必要があるのではといった声などが上がっています。
国際オリンピック委員会の発表によると、もしもカミラ・ワリエワ選手が15日に行われるショートプログラムで、フリーへの進出可能な24位以内に入った場合、25位の選手もフリー進出を認めること、さらにワリエワ選手が最終結果で3位以内に入った場合は、メダル授与式を行わないと発表しています。
さらに、延期となっている団体戦のメダル授与式は、五輪期間中に行わないとしています。
このようにカミラ・ワリエワ選手のドーピング違反問題で様々な影響が出ており、さらに波紋を広げる事態となっていますが、とりあえず、明日から行われる女子シングルはどういった展開を迎えるのか、そしてワリエワ選手のドーピング問題はまだ終結を迎えたわけではなく、今後メダル剥奪となる可能性も十分あるとみられているので、引き続き動向を見守っていきたいですね。