平昌五輪・フィギュアスケート女子シングルの金メダリストで、今年の世界選手権でも優勝したロシアのアリーナ・ザギトワ選手(17)が13日、ロシアの政府系メディア『チャンネル1』に出演し、競技活動休止を電撃発表したことによって、事実上の現役引退宣言なのではとの見方も広がる事態となっています。
アリーナ・ザギトワ選手は『チャンネル1』で「今季はもう大会に出場しない」と明かし、その理由については、「私は全てを手に入れた。でも、人生は満たされているばかりではいけない。スタート地点に立とうという気持ちを取り戻したい」
と説明しています。
<↓の画像が、ロシアメディアに競技活動休止宣言したアリーナ・ザギトワ選手の写真>
競技からの完全引退は否定しており、「練習は続けます。自分自身を探しながら、新しい要素を学びたい。ジャンプの新しいアプローチも学べれば」
といい、今後もアイスショーに出演したり、大学へ行って指導者になるための勉強に専念する考えを示しています。
アリーナ・ザギトワ選手は7歳の頃から本格的にフィギュアスケートを始め、2016-2017年シーズンのジュニアグランプリ第1戦で優勝しグランプリファイナル進出を果たし、そこでショートとフリーでジュニアクラス世界最高得点をマークして優勝、ロシア選手権でも銀メダルを獲得、その後も世界ジュニア選手権で自身が持つジュニア最高のフリー、総合得点を更新して優勝しました。
そして、2017-2018年シーズンのグランプリシリーズでは、中国杯とフランス杯で優勝、そしてグランプリファイナルでも優勝を果たし、その後のロシア選手権、ヨーロッパ選手権で優勝し、15歳で出場した平昌五輪では団体で銀メダル、シングルでは同じくロシアのエフゲニア・メドベージェワ選手を下して金メダルを獲得しました。
このように複数の大会を制して波に乗っていましたが、世界選手権のフリーでミスを連発して結果は5位、個人戦優勝記録は10でストップし、2018-2019年シーズンはネーベルホルン杯、グランプリシリーズ・GPヘルシンキで優勝したものの、内容は今一つで得点も伸びず、グランプリファイナルもライバルの紀平梨花選手に差を付けられて2位に終わり、前年初優勝したロシア選手権でもミス連発で5位、ヨーロッパ選手権もジャンプの回転不足によって格下のソフィア・サモドゥロワ選手に破れて2位の結果でした。
このように成績低迷が続いていたものの、今年3月開催の世界選手権では見事な演技で初優勝を果たし、完全復活かと思われたのですが、12月にイタリアで開催のグランプリシリーズファイナルでは、ジャンプの回転不足などによって減点され、まさかの最下位という屈辱的な成績となっており、早くも世代交代かとの声が上がり始めています。
アリーナ・ザギトワ選手自身は敗因について「精神的なものだと思います」と、プレッシャーに打ち勝てなかったメンタル面の弱さに原因があったと分析していた一方で、ロシアメディアなどは敗因について「体形変化」を挙げています。
ロシアの元フィギュアスケート選手マリア・ブッテルスカヤさんは、「アリーナは太っているようには見えません、女性らしく見えます。そう、彼女はもう女性なのです。戦うのが大変です。平昌五輪では彼女は少女でした。そして今、成長が始まった。これは誰にでも起こることで、体重が増えますし」
と、体の成長が演技に影響を与えているとしています。
また、「ザギトワは今、考え方や精神面が全く違ったものになっています」とし、「彼女は何のために滑っているのかを分かる必要があります。なぜなら、他のスケーターはすべての力を振り絞って戦おうとするでしょうが、彼女はもうすべて勝ってしまいすべてを達成してしまった」
と語り、17歳までに主要な国際大会を全て制してしまったことによって、モチベーションを維持することが困難になっているのではないかと分析しています。
しかし、アリーナ・ザギトワ選手はまだピークを過ぎたわけではないとも語っていました。
他にも、これまでに荒川静香さんや浅田真央さん等を指導してきた名コーチのタチアナ・タラソワさんは、「体形の変化の問題はある。スピード不足になっている」と指摘した上で、「彼女は彼女自身と戦っている。彼女は克服するでしょう」などと語り、アリーナ・ザギトワ選手の引退論に対して否定的な発言をしています。
一度競技生活から離れてから復活を果たした元フィギュアスケート選手で、プロフィギュアスケーターの浅田真央さんは14日放送のラジオ番組『とくモリ!歌謡サタデー』(ニッポン放送)に出演し、アリーナ・ザギトワ選手の競技活動休止発表について話が及ぶと、「やはりフィギュアスケートは身長だったり体重の変化で、少しずつ感覚が変わってきてしまうので、多分いまザギトワ選手は、一番乗り越えなくてはいけない1つの壁かなという風には思いますね」
と分析しています。
<↓の画像は、プロフィギュアスケーター・浅田真央さんの写真>
浅田真央さんによれば、女子選手の場合は特に成長期の体重増加が乗り越えなければならない壁だそうで、浅田さんも五輪で銀メダルを獲得した19歳のころが一番体重に気を付けていたといい、「私も身長とか体重の変化で、ジャンプが飛べなくなってしまったことはあったんですけど、そこは諦めずにずっとやり続けて、乗り越えました」
と自身の経験を振り返った上で、アリーナ・ザギトワ選手には「ここを乗り越えたらまた明るい光が見えてくると思っています」と語っていました。
アリーナ・ザギトワ選手に限らず思春期は体が大きく変化し、身長や体重が大きく変わることによって、フィギュアスケートや体操などのスポーツは特にピーク年齢が低い競技として知られていますが、ザギトワ選手はまだ17歳で、今年の世界選手権で優勝するほどの能力を持っています。
日本と同様にフィギュアスケート大国と言われるロシアは特に選手層が厚く、毎年のように高い演技力を持つ選手が出てくることから、アリーナ・ザギトワ選手が競技から離れる期間が長引くほど厳しい状況になるかと思いますが、体重のコントロールやメンタル面の改善などによって、完全復活を果たした姿を見せてくれることに期待したいです。