国立研究開発法人『宇宙航空研究開発機構(JAXA)』を定年退職後も、JAXAの新事業促進部特任担当や宇宙機エンジニア等として活動している野田篤司さん(61)が、SFアニメ『プラネテス』の内容を痛烈批判し、ネット上で賛否両論となっています。
『プラネテス』は、漫画家・幸村誠さん(45)が1999年~2004年にかけて漫画雑誌『モーニング』で連載していた宇宙を舞台とした作品で、2003年10月~2004年4月にかけてNHK BS2でアニメ化(全26話)され、今年1月9日からNHK Eテレの日曜19時枠で再放送されています。
『プラネテス』のあらすじ内容は、人類が宇宙開発を推し進め、巨大宇宙ステーションや月面都市を建設し、一般人にとっても宇宙が身近な存在になりつつある未来(西暦2075年)を舞台に、宇宙開発に伴い大きな問題となっている「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」を回収する会社で働く主人公・星野八郎太(ハチマキ)らが、宇宙開発に反対するテロ組織と戦う姿などが描かれています。
原作の漫画は2002年に、優れたSF作品に贈られる『星雲賞』のコミック部門を受賞し、2005年にはアニメも同賞のメディア部門を受賞しています。
そんな作品が再び地上波で再放送されファン等の間で反響を呼ぶ中で、JAXAで超小型衛星の開発に携わってきた野田篤司さんはツイッター上で、「プラネテス 今まで見ていなかったので、義務的に再放送を3話目まで見ているのだが、何処が面白いんだ、このアニメ。軌道力学的な考察が無茶苦茶なのは、まだ許せるが、主人公だあろう新人、もし私のところに配属されたら、速攻で、不適格者としてクビだ。宇宙特にEVAを甘く見すぎている」「死にたくなかったら、誰も、こう言うのはバディとして組みたくない。まだ3話目までだが、4話目以降、劇的に面白くなるのか?」
とツイートしました。
<↓の画像が、野田篤司さんのツイート>
このツイートに対して、宇宙開発事業も手掛けている実業家の“ホリエモン”こと堀江貴文さんが返信し、「デブリの危機を不必要に煽っててめっちゃ迷惑なんすよねー、、、」とコメント、それに野田篤司さんも賛同し、「ですね。『デブリを過度に問題多い物』とした上で『簡単に除去で切る物』として描いていますね。本当に除去が必要なデブリは『EVAで簡単に近付いて除去できるような物』ではないし、『有人宇宙船で撮りに行けるほど低い高度ではない』です」
と、作品の問題点を指摘しています。
<↓の画像は、堀江貴文さんと野田篤司さんのツイート>
これらの投稿に多くの批判も寄せられる中で野田篤司さんは、「エンターテインメントのアニメに、面白くないと思ったら、こう言う事を Twitterには書かないで、単に見るのをやめるだけなんだが、普通は。ただ、プラネテスの影響で宇宙に対して誤解してる人が多く、実際に宇宙をやっているプロとして迷惑しているので、義務でも何でも最後まで見なくてはと」
とアニメを視聴する理由を説明しています。
<↓の画像は、野田篤司さんのツイート>
また、あくまでもフィクションのSFアニメを問題視する理由については、「面白く思う人が作品を見て誤解した宇宙開発の認識の元に、現実の宇宙開発に弊害を与えてるから困るんですよ。実際に宇宙開発してる者としては」
と綴っています。
<↓の画像は、野田篤司さんのツイート>
一方の原作者・幸村誠さんは堀江貴文さんのツイートに対して、「あらー…たいへんだ、おこってらっしゃる。なんか言ったほうがいいのかな。」と反応し、『プラネテス』の内容について弁明をしています。
幸村誠さんは野田篤司さんと堀江貴文さんのツイートを確認したようで、「ちょっとひと言お断りを。全くもってプラネテスはフィクションでございまして、ウソばっかりでございます。ありもしない宇宙船、ありもしないデブリ、いもしない人物、未来が舞台のボクの空想でございます。『面白くない』というご感想については、全くボクの力不足で申し訳ございません。みーんな空想、フィクション、現実ではございません。OK?その上でお楽しみいただけましたら幸いです。その上で、読者の皆様の心に何かポジティブな気持ちを呼び起こすことができましたなら、それはたいへん漫画家冥利に尽きます。プラネテスをお楽しみくださっている皆様、ありがとうございます。」
と綴っています。
<↓の画像は、プラネテスの原作者・幸村誠さんのツイート>
そして、それぞれのツイートを受けてネット上では、
- ただのアニメだし…フィクションじゃん
- アニメごときに何熱くなってるんだこの人
- 宇宙兄弟派なのかもしれない
- 面白くないと思えば、見なければいいだけ
- この手のアニメは本職は見ちゃいかんよ 嘘ばかり目について萎えちゃうもの
- 専門知識があるからこそ引っかかるって誰でもあると思うけどな
- アニメにマジ突っ込みするぐらい頭の固い人間じゃないとJAXAに入れないってことか
- 青年が夢追いかけて成長していく良くある話しだし。何をムキになってるのか不明
- プラネテスは20年近く前のフィクション それもJAXAが取材協力
- こういうのって普通は作る前に知識が間違ってないか色々調べるよね
- あれかな NHKだからもうちょいまじめなやつ期待したんかな
- バカッターを象徴するような元JAXAに対し、原作者の大人な回答。このギャップよ
- 鬼滅も街と線路と田畑・道の構成がおかしいって言う人もいたな。客車のデザインにも口出している人もいた。みんな常に文句が言いたいんだよ
- 大河ドラマに「史実ガー!!」と叫んでるジジィみたいだな。無粋の一言で終わり
などの声が上がっています。
野田篤司さんは現在も宇宙開発事業に携わる身として、スペースデブリ等に関して誤った認識を与えるような描写に苦言を呈し、こうした専門家による意見も非常に重要なものでしょうし、内容がつまらないというのもあくまでも個人の意見なので、何と言おうが自由ではあるものの、あくまでもフィクションのアニメに対して、そこまでクレームを入れるのはどうなのかと批判の声が噴出しています。
ちなみに、プラネテスのアニメではJAXAが取材協力としてクレジットされているのですが、野田篤司さんが指摘するスペースデブリの描き方等について、JAXAに取材したものがどこまで反映されているのかは不明です。
野田篤司さん曰く、『プラネテス』には事実と異なる描写があることで、宇宙開発に弊害を与えているといい、そうしたことで作品を批判したくなる気持ちも分からなくもありませんが、正直つまらないと思うのであれば見なければいいのではないかと思いますし、野田さんの言動が現在も勤務するJAXAのイメージ悪化にも繋がりかねないことから、あまり熱くなり過ぎない方がいい気がしますね。