音楽デュオ『CHAGE and ASKA』のメンバーで、シンガーソングライター・ASKAさん(本名=宮崎重明 60歳)が、芸能リポーター・井上公造さんに未発表曲の音源を提供したところ、無断で2016年11月放送の情報・ワイドショー番組『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系 読売テレビ制作)で流され、著作権と著作者人格権(公衆送信権および公表権)の侵害にあたるとして、3307万400円の損害賠償を求めた裁判の判決が11日に下されました。
沖中康人裁判長は、「未発表の楽曲を放送する際に、ASKA氏の許諾を取ったとは認められない」とASKAさん側の主張を認め、井上公造さんと読売テレビ側に対して、117万4000円(慰謝料100万円+全国放送1曲1回分あたりの使用料など)を支払うよう命じる判決を言い渡しました。
ASKAさん側は昨年8月22日に、井上公造さんと読売テレビに損害賠償を求めて提訴していました。
判決によると、ASKAさんは2015年12月に「楽曲の感想を聞きたい」「誰にも聞かせないでください」として、井上公造さんにメールで未発表音源のデータを送り、それから約1年後の2016年11月28日放送の『情報ライブ ミヤネ屋』で、ASKAさんが覚せい剤使用容疑で再逮捕されたというニュースを扱った際に、井上さんが番組側に未発表音源のデータを番組に提供し、番組内で約1分にわたって楽曲の一部を流しました。
これに対して井上公造さんや読売テレビ側は、「事件報道のための利用」と正当性を主張したものの、東京地方裁判所は「楽曲は、事件と直接は関係ない」と退け、「井上氏が芸能リポーターだからといって、録音データの提供で公表を黙示に許諾したとは認められない」と指摘しています。
「著作者人格権」というのは、著作者が音楽や書籍の公表時期、方法などを決める権利を指し、裁判ではその権利の侵害が認められた形で、裁判長は被告側に対して「放送事業者やリポーターは、著作権や著作者人格権を侵害しないようにする高度の注意義務がある」とも指摘しています。
この判決を受けて11日に生放送された『情報ライブ ミヤネ屋』では、司会アシスタントの林マオアナウンサー(34)が読売テレビと井上公造さんのコメントを読み上げ、読売テレビ側はこの判決に対して、「今回の判決を真摯に受け止めています。ASKAさんをはじめ関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことをお詫びします。今後の対応について慎重に検討したいと考えております」
とコメントしています。
一方の井上公造さんは、「今回の判決を真摯に受け止めています。ASKAさんにご迷惑をおかけしたことを改めてお詫びいたします」
と謝罪しています。
これに対してネット上では、
- ミヤネ屋みてたけど、わざわざCMまたぎしてミヤネはスルーしてた。
- そりゃASKAが怒るのも無理ない。117万でもまだまだ安い
- ASKAが当時再逮捕される寸前に、ドヤ顔で流した訴訟問題ですね。
どんな理由であれ、アーティストが著作権申請していない楽曲を許諾なしで放送すること、あたかも変人が作った曲と視聴者に印象付けたメディアの罪は重いと思うよ。
ASKAのファンだけど、他のアーティストが同じ条件でこんな報道のされ方をしたら、それも許せないな。 - クスリ問題とこれは別。金額が低すぎるのは気になるけど、とりあえず井上公造と読売TVが逃げきらなかった事だけは良かったかな。
- この裁判の件はASKAさんがブログで前から伝えてた。マスコミはどこも報じなかった。
人には厳しく身内には甘い今のマスコミをよく表してる。ASKAさんは低額の賠償金で判決が出ると思うという事も言ってた。それでも今後の為にも裁判を起こさないといけないと書いてた。
この判決が今後のマスコミの姿勢を少しでまた変えてくれるキッカケになる事を願います。
などのコメントが寄せられています。
ASKAさんは2016年11月に覚せい剤使用容疑で2度目の逮捕をされましたが、同12月には嫌疑不十分で不起訴となり、ASKAさんは自身のブログ内で、無断でデモ音源を流した井上公造さんに対して怒りをあらわにしていました。
番組で流したのは、『2020年東京オリンピックイメージ曲』とされる未発表音源で、ASKAさんは井上公造さんに対して事前に「絶対に誰にも聞かせないでください。」と伝えていたにも関わらず、2度目の逮捕のタイミングで『情報ライブ ミヤネ屋』内で音源を無断で流され、ASKAさんは井上さんに対して電話で「公造さん、曲流しちゃだめだって。曲流したらだめだって」と注意していました。
そして、2016年12月23日放送の『情報ライブ ミヤネ屋』では、井上公造さんが電話出演し、番組側に未発表音源を提供した理由については、番組の責任者と話し合いをした上で、「ASKAさんのアーティストとしての現状を伝えるために流そうか」と判断し、公開したと経緯を説明した上で、ASKAさんに謝罪していました。
一方で司会の宮根誠司アナは、「番組としても楽曲を含めて慎重に検討した結果、放送したという形になりましたけれども、ASKAさんに対して大変、心情を害したということは大変申し訳ありませんでした。本当にお詫び申し上げます」
と、頭を下げて謝罪していました。
しかし、無断で未発表音源をテレビで流すというのはあり得ない話であるため、当時ネット上ではバッシングの嵐となっていました。
なお、著作者人格権の侵害による刑事罰は、「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」と定められています。
井上公造さんは幅広い情報網を持っていることから、様々な情報・ワイドショー番組に出演するなどして活躍しているのですが、ASKAさんとのやり取りを捏造した疑いも浮上するなどしており、同業者からも評判が悪いといった話もあります。
今回の問題によってさらに井上公造さんのイメージが悪化しているほか、音源を流した『情報ライブ ミヤネ屋』も同様に批判されているので、このトラブルが視聴率低迷に拍車をかけることになるかもしれないですね。