『海猿』『ブラックジャックによろしく』等の原作者として知られる漫画家・佐藤秀峰さん(さとう・しゅうほう 50歳)が、漫画作品の実写化を巡るトラブルについて言及し、映画の撮影現場で主演俳優の“衝撃発言”も暴露しており、ネット上で大きな反響を呼んでいます。
佐藤秀峰さんは文章投稿サービス『note』で【死ぬほど嫌でした】と題して、「日本テレビ系ドラマ『セクシー田中さん』の原作者で漫画家の芦原妃名子さんが亡くなられました。とても悲しいです。漫画を原作とした映像化のトラブルということで、僕の名前を思い出す人も多かったようです。」と書き出し、自身も体験した漫画の実写化を巡るトラブルについて綴っています。
<↓の画像は、漫画家・佐藤秀峰さんの写真>
佐藤秀峰さんの代表作で、海上保安官を主人公とした漫画『海猿』は1999~2001にかけて『週間ヤングサンデー』で連載され、2002年にNHKが初めて実写ドラマ化し、主演はTOKIO・国分太一さんが務めました。
その後、2004年にフジテレビが俳優・伊藤英明さん主演で実写映画化し、劇場版1作目は最終興行収入が17.4億円を記録、2005年7月期には同局で連続ドラマが放送され、全11話の平均世帯視聴率は13.2%を記録しました。
<↓の画像は、フジテレビ版『海猿』出演者の写真>
2006年には劇場版2作目が公開され、ドラマの放送によって映画も大ヒットを記録し、最終興行収入は前作の4倍以上となる71億円を記録、同年の邦画の実写映画では1位の興行収入となりました。
こうしたヒットを受けてフジテレビはそれ以降も映画製作を続け、2010年公開の劇場版3作目は最終興行収入が80.4億円、2012年公開の劇場版4作目は73.3億円と、フジテレビのドル箱コンテンツとなりました。
しかし、4作目が公開後の2012年10月に佐藤秀峰さんが自身のX(旧ツイッター)で、「フジテレビさんは信頼に値しない企業であると判断したため、今後は一切新規のお取り引きはしないことにしました。なので、映画『海猿』の続編などは絶対にありません」
と、フジテレビとの絶縁を宣言しました。
その背景には、原作者を軽視して驕り高ぶったフジテレビの言動があり、同局の報道番組がアポ無しで佐藤秀峰さんの事務所に取材に訪れ、チーフプロデューサーはこの件を謝罪したものの、その後再び同様の行為をされたといいます。
また、『海猿』の関連書籍の出版にあたり、佐藤秀峰さんとの間で契約を交わすこと無く、フジテレビ側が勝手に出版を許諾していたことが判明し、こうした対応を受けて佐藤さんはフジテレビに強い不信感を抱いて絶縁を宣言という流れになっており、当時『ニコニコ動画』で公開した動画ではフジテレビを痛烈批判していました。
それから3年後にフジテレビから正式に謝罪を受けたことを明かし、もし今後続編製作のオファーがあった場合には交渉を拒否しないとしていましたが、2017年10月をもって『海猿』の実写映像化に関する契約が終了したことを明かし、「今後、テレビやネットで放送、配信されることは永久にありません。」と報告していました。
それから6年以上経ち、芦原妃名子さんの急死を受けて、佐藤秀峰さんはnoteで改めて自身が体験した実写化を巡るトラブル、その裏側について綴っており、『海猿』の映像化にあたっては著作権管理委託契約を結んでいる出版社側がオファーを受け、詳しい話も聞かされないまま映画化が決定し、佐藤さんが口を挟める余地は無かったといい、原作使用料もたったの200万円弱だったそうです。
映画化が決定後は制作サイドと一度も会う機会は無く、脚本も見せられることもなく公開されたそうで、その当時を振り返り、「作品が自分の手から奪われていく感覚がありました。『漫画と映像は全くの別物である』と考えました。そうしないと心が壊れてしまいます。映画はDVD化されてから観ました。クソ映画でした。僕が漫画で描きたかったこととはまったく違いました。しかし、当時はそうした感想を漏らすことはしませんでした。たくさんの人が関わって作品を盛り上げている時に、原作者が水を差すのは良くないのかなと。自分を殺しました。」
と綴っています。
続けて、「言えることは、出版社、テレビ局とも漫画家に何も言わせないほうが都合が良いということです。出版社とテレビ局は『映像化で一儲けしたい』という点で利害が一致していました。」
とし、テレビ局だけでなく出版社に対しても不信感を募らせたこと等を明かしています。
さらにその後も、劇場版2作目が公開された頃には、漫画の執筆に関わったある人物が原作者を名乗り始め、「映画次回作の脚本はオレが書く」と言い出してトラブルになったことがあり、佐藤秀峰さんは嫌気が差して続編の映像化を拒否し、その数年後にフジテレビのプロデューサーと初対面し協議を続けた末に、金銭的な解決で4作目まで作られることになったとしています。
そして、佐藤秀峰さんは一度だけ撮影現場を見学する機会があったとし、その時のエピソードも明かしており、「プロデューサーが主演俳優を紹介すると言うので挨拶に行きました。撮影前だったらしく、その俳優はピリピリしていました。プロデューサーが話しかけると『原作者? しゃべんなきゃダメ!?』と吐き捨てました。嫌なヤツだと思いました。」
と、伊藤英明さんとみられる俳優の言動を暴露しています。
<↓の画像は、『海猿』シリーズ出演の伊藤英明さん、加藤あいさんの写真>
この投稿を受けてネット上では、
- 原作者の方に感謝だろーが!だから俳優とか天狗になってると思われちゃうんだよ!
- 伊藤英明って内側からにじみ出る性格の悪さみたいな演技が上手くていい役者だと思ってたんだけど…あれは素の自分だったんだな
- 俺の中で高感度高かった伊藤英明終わった。あの大ヒットのあとも大した仕事ないのにも納得がいった。
- 伊藤英明さんは若い頃からスキャンダルも多いし、アレな感じの人だから驚きはしない。
- 実際に言った言葉が「原作者?しゃべんなきゃダメ!?」なのかはわからないけど、もし実際に言ったのだとしたら本番前とかは全く関係なく何の擁護もできない。
「演じてやってる」の気持ちがなければこの言葉は出ない。人として、というレベルの話。 - 原作軽視に役者は無関係というけど、実際は役者を含めて業界全体が驕り高ぶって、傲慢な態度を取っているんですよ。
役者、アイドル歌手、モデルなど芸能人達は確実にその一端を担っている。金額の大小や、露出が多くて認知されているかどうかで偉ぶるのはやめて、0から作品を創りあげた原作者をちゃんとリスペクトしろよ。こんなんだからオワコンなんだよ。 - 原作がなければその仕事にありつけなかっただろうに。脚本家も演者も、原作を軽く考えすぎていたんだろうね。
などの声が上がっています。
2012年に佐藤秀峰さんがフジテレビとの絶縁宣言をした当時、伊藤英明さんは別の作品のイベントに出席した際に、「2度とできないってニュースで見て、こういうもんなのかなって思って」「どうか皆さん、伊藤英明を嫌いになっても『海猿』を嫌いにならないでください」と語っていました。
『海猿』シリーズは伊藤英明さんの人気を押し上げた代表作品で、そんな大事な作品の原作者である佐藤秀峰さんが撮影現場を初めて訪れた際に、「しゃべんなきゃダメ!?」と言い放ったというのはにわかに信じ難いものの、これがもし事実ならば、制作サイドだけでなくキャストも原作者を軽視し、リスペクトの欠片も無かったということなのでしょうね。
佐藤秀峰さんによれば「漫画家は蚊帳の外」といい、出版社も制作サイドとグルになって、映像化にあたって口出し出来ないように動いていたそうで、「出版社は、テレビ局には『原作者は原作に忠実にやってほしいとは言っていますけど、漫画とテレビじゃ違いますから自由にやってください』と言います。そして、漫画家には『原作に忠実にやってほしいとは伝えているんだけど、漫画通りにやっちゃうと予算が足りないみたい』などと言いくるめます。『海猿はスペクタクルだから!原作通り作ったらハリウッド並みにお金がかかっちゃうから!』。かくして、漫画家は蚊帳の外。テレビ局と出版社の間で話し合いが行われ、事が進んでいきます。」
とも綴っています。
『セクシー田中さん』の実写化にあたっても、芦原妃名子さんは制作サイドと会わずに『小学館』を通じて様々な要望を伝えるも、それが守られずに何度も改変をされたと訴え、そして脚本の修正作業により心身ともに疲弊してしまったと告白していましたが、制作サイドだけでなく出版社にも大きな責任がありそうです。
芦原妃名子さんの死を受けて佐藤秀峰さんも含め、複数の漫画家や作家らが原作者の扱いの問題点などを指摘しており、こうした声を受けて制作サイドは今後様々な改善を行っていってほしいと思います。