漫画家・かわぐちかいじさん作、ジャーナリスト・恵谷治さん監修による漫画『空母いぶき』が若松節朗監督により実写映画化され、西島秀俊さん(48)主演で24日から公開されるのですが、内閣総理大臣・垂水慶一郎役に起用された佐藤浩市さん(58)が、漫画雑誌『ビッグコミック』のインタビューで問題発言をしているとして物議を醸しており、作家・百田尚樹さん(ひゃくた・なおき 63歳)らも怒りをあらわにしています。
『空母いぶき』は、2010年に発生した尖閣諸島中国漁船衝突事件、その後頻発している尖閣諸島中国船領海侵犯事件を念頭とし、日中関係の中で離島防衛、奪還作戦の可能性が現実味を帯びてきた中で、2012年の政権交代で第2次安倍内閣が平和安全法制の制定を目指し、国会で議論が行われている中で発表された軍事作品で、フィクションでありながら現実的で具体性のある内容となっています。
<↓の画像が、漫画『空母いぶき』の写真>
この作品に登場する内閣総理大臣・垂水慶一郎役を佐藤浩市さんが演じるのですが、原作の『空母いぶき』を連載中の『ビッグコミック』には映画のインタビュー記事が掲載されており、初の総理大臣役役について佐藤さんは、「最初は絶対やりたくないと思いました(笑)。いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残ってるんですね。」
と明かしています。
また、総理役を演じるにあたって監督やプロデューサーとは、「僕がやるんだったら、この垂水慶一郎をどういう風にアレンジできるか」を話し合った上で、オファーを引き受けたと語っています。
<↓の画像は、内閣総理大臣・垂水慶一郎役を演じる佐藤浩市さんの写真>
そして、劇中に登場する垂水慶一郎が漢方ドリンクの入った水筒を持ち歩いている理由について、「彼はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらったんです。だからトイレのシーンでは個室から出てきます」
とオリジナル設定を入れたことを明かしているのですが、これに対してネット上では、安倍晋三首相のことを揶揄しているのではないかと物議を醸しています。
安倍晋三首相は退陣要求が過熱していた2007年8月から胃や腸に痛みを感じ、その症状がさらに悪化して下痢が止まらなくなり、これによって様々な公務などに出席出来ない状況が続き、2007年9月には「内閣総理大臣及び自由民主党総裁を辞する」と表明、その後東京都内の慶応大学病院に緊急入院しました。
退陣してから4年後の2011年に週刊誌『週刊現代』に掲載されたインタビュー記事では、安倍晋三首相は当時の体調不良について特定疾患(難病)「潰瘍性大腸炎」だったと公表し、この病気は中学生のころに発症したといい、「潰瘍性大腸炎は自己免疫疾患といって、自分の免疫が腸壁を敵と誤認して攻撃する病気です。その攻撃が強くなると、腸壁が剥落して潰瘍ができ、びらんして頻繁に下血と下痢を繰り返す。1日に20~30回もトイレに駆け込むようになり、夜も4~5回はベッドとトイレを往復するようになって寝られなくなる。こうした症状は、何の前触れもなく起こり、ひとたび発症すると1ヶ月間ぐらい続きます」
と明かしています。
また、幹事長、官房長官時代には症状が収まっていたものの、2006年9月に首相に就任したころから症状が悪化したことなども告白しています。
こうした背景があることから、『空母いぶき』に登場する首相を演じる佐藤浩市さんが、「ストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定」に変更したということが物議を醸しており、実写映画化された『永遠の0』や『海賊とよばれた男』などの作品で知られる百田尚樹さんはツイッター上で、「『空母いぶき』の原作は素晴らしい! しかし映画化では、中国軍が謎の国に変えられているらしい。それだけでも不快だったのに、『下痢する弱い首相にしてくれ』という一役者の要求に、脚本をそう変えたと聞いて、もう絶対に観ないときめた。」
と宣言しました。
<↓の画像は、百田尚樹さんのツイート写真>
その後も設定変更に対して、怒りの声を上げる複数のツイッターユーザーのツイートをリツイートしながら、以下のような怒りコメントを連投しています。
三流役者が、えらそうに!!何がぼくらの世代では、だ。
人殺しの役も、変態の役も、見事に演じるのが役者だろうが!
私は自分の作品の映画化に関して、キャスティングに口出ししたことは一度もない。
しかし、もし今後、私の小説が映画化されることがあれば、佐藤浩市だけはNGを出させてもらう。
佐藤浩市の「下痢する首相にしてもらった」というインタビュー記事が、大炎上してる。
おそらく明日あたり制作会社がコメントするだろうな。「記事は実際のコメントとは違う。間違ったニュアンスで伝えられた」とか何とか…。
今頃、スタッフがその文章を必死に作っているとこかな。ご愁傷様やで。
【引用元:百田尚樹さんのTwitterより】
また、出版社『幻冬舎(げんとうしゃ)』の創業者で代表の見城徹社長(けんじょう・とおる 68歳)もツイッター上で、以下のように怒りをあらわにした投稿を連投しています。
佐藤浩市さんは何でこんなこと言ったんだろう?
三流役者だとは思わないが、百田尚樹さんの言う通りだ。大体、そんなに嫌なら出なければいいだけだ。しかも、人の難病をこんな風に言うなんて。
観たいと思っていた映画だけど、僕も観るのはやめました。
[体制側の立場]って一体何だ?それはさておき、役者が[体制側の立場]を演じることに抵抗感があるんなら、俳優をやめた方がいいよ。
本木雅弘は昭和天皇を見事に演じた。役所広司の徳川家康には舌を巻いた。
表現に安っぽい主義主張を出して来るのは共産党系か新興宗教系の俳優だけだと思っていたよ。
佐藤浩市さんは大好きな俳優だった。しかし、これは酷い。見過ごせない。
こんなことを言うんなら、断るべきだった。佐藤浩市さんの要求を飲んだ製作側も情けない。
佐藤浩市さんの真意は[安倍首相を演じるのに抵抗感があった]ということだと思う。
それを[体制側]などと婉曲に言うからおかしなことになる。だったら出演を断れば良かった。脚本変更を要求して、病気を笑い者にするように演じたなら、黙して語らないことだ。そんな悪意のある演技を観たくもないよ。
自分の安っぽいイデオロギーのためにこの映画の本質をぶち壊していることに何故、想いが至らないのだろう?
映画は一人の役者のイデオロギーのためにあるのではないんだよ。最悪だ。
実は昨夜、会食をした芸能プロダクションの社長から、「うちの俳優が出ているので是非、観て下さい」とチケットを2枚頂いた。
最初から首相を貶める政治的な目的で首相役を演じている映画など観たくもない。
自分の発言がどれだけ共演者やスタッフに迷惑をかけているか、よく考えて欲しい。
演じる対象に批判や悪意があるなら、そのように演じるだろう。それは役者の勝手だ。
インタヴューで自分の主義・主張を語るのも構わない。しかし、「出演するのに抵抗感があったから、首相役をストレスに弱く、すぐにお腹を下す設定にしてもらった」と語るのはどうだろう?そんな映画、観たくもない。
映画で首相役を演じるのに、何故、抵抗感があるのか?僕には解らない。
体制側の人間だからというのなら殆どの役は出来なくなる。原作の垂水首相を無理やり安倍首相と結び付けるのも変だ。
自分の主義・主張のために映画をプロパガンダの手段にするのはもっと変だ。
役者なのに映画と原作を舐めている。
【引用元:見城徹社長のTwitterより】
またネット上の反応を見てみると、
- 病気の揶揄はダメだろ
- 病気をなめんなコラ
- 原作通りにやれよ
- 原作じゃ吐いてるんだよな わざわざ腹を下す設定に変える必然性がない
- 謎の軍隊 オリジナル女性キャラ追加 政権批判を追加
こりゃ駄目だ - 水筒持ち歩きも安倍を意識して追加した設定なんだろうな
- ネトウヨがターゲットど真ん中の映画に出といて何てこと
- 別に思想がド左翼でもいいけど、やっていいことと悪いことの区別ぐらいつければいいのに。いい大人が何やってんだか
- 揶揄なんてしてないような…ネタとしてはずしたかもしれないが
- 下痢設定なんてダメっていう方が下痢差別だろ。批判している連中はほんと頭おかしいわ
- とりあえず観てから批判すればいいのに。でも原作に無い設定をなんでわざわざ付け加えるのかはよくわかんないよね
- 最初からそういう設定ならわかるが追加してもらうとかすごいな
- 断れば良かったのに。金に目がくらんだ小さい男になっとるで
などのコメントが寄せられており、賛否両論となっています。
『空母いぶき』はリアリティのある作品だけに、作品に登場する垂水慶一郎が安倍晋三首相と同様に腹を下したり、水筒を持ち歩いているという設定に怒りの声が噴出し、炎上騒動に発展してしまっているのですが、これが本当に安倍首相を揶揄することが目的で加えたオリジナル設定だとしたら問題でしょうね…。
実写版『空母いぶき』には、原作には登場しない人物が登場するほか、中国の漁船は「国籍不明の船団」などに変更されるなどしており、中国側に配慮したものとなっている様子なのですが、その一方で日本の首相は「ストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまう」というオリジナル設定を取り入れており、これは果たして必要があったのかと疑問を抱きます。
ちなみに、佐藤浩市さんは『ビックコミック』のインタビューで、自身が演じる垂水慶一郎について、「少し優柔不断な、どこかクジ運の悪さみたいなものを感じながらも、最終的にはこの国の形を考える総理、自分にとっても国にとっても民にとっても、何が正解なのかを彼の中で導き出せるような総理にしたいと思った」
とも語っています。
これだけなら良かったと思いますが、「最初は絶対やりたくないと思いました(笑)。いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残ってる」という発言に加えて、腹を下す設定を取り入れたことで炎上騒動に発展していることを受けて、今後この件について何かコメントを出すのかどうか注目したいですね。