12日放送の情報番組『スッキリ』(日本テレビ系 平日午前8時)で、アイヌ民族を傷つける不適切な表現があったとして、同日夕方放送の『news every.』で謝罪コメントを発表したのですが、ネット上では炎上状態が続いています。
不適切な表現があったのは、動画配信サービス『Hulu』のオススメ番組を紹介する「週末ジョイHuluッス」というコーナーでした。
この日のコーナーでは、北海道・二風谷に住むアイヌの女性・萱野りえさんを追ったドキュメンタリー作品『Future is MINE アイヌ、私の声』を紹介後、ピン芸人・脳みそ夫さん(41)が作品と絡めて、「この作品とかけまして、動物を見つけた時ととく。その心は、『あ、犬(アイヌ)』ワンワンワンワン!」といった謎かけを披露しました。
<↓の画像が、12日放送『スッキリ』で差別表現をしたシーンの写真>
この発言について、北海道大学アイヌ・先住民研究センターの北原次郎太准教授(アイヌ名=北原モコットウナシ)は、『朝日新聞』の取材に対して、「前後の説明を見れば、好意的に紹介しようという意図があったことは分かるが、長年多くの人々のトラウマとなってきた言葉が流れてしまったことは重大だ」「本来は多様性の大切さを扱った映像。この件が大手メディアが国内の重要なトピックに対して大変鈍感であることの問題として取り上げられることを望む」
と語っています。
- 12日放送『スッキリ』アイヌ民族に対する差別発言シーンの動画(Twitter)
アイヌ民族と犬をかけた差別は昔からあったそうで、番組放送後にネット上では、「ダジャレじゃなくて、『畜生がいる』『毛むくじゃらの人がいる』って意味で使われてきた言葉なんだよ」といった声が上がっていました。
その後、12日の夕方に放送された『news every.』の中で、司会を務める藤井貴彦アナウンサーが、「今日放送した情報番組『スッキリ』の中で、アイヌ民族の女性をテーマにしたドキュメンタリー作品を紹介しました。それを受けての放送内容において、アイヌの方たちを傷つける不適切な表現がありました。日本テレビではアイヌの皆様、関係者の皆様に深くお詫び申し上げるとともに、今後、再発防止に努めてまいります。申しわけありませんでした。」
と謝罪コメントを発表しました。
また、日本テレビは今回の件について、「当該コーナーの担当者に、この表現が差別に当たるという認識が不足しており、放送前の確認も不十分でした。その結果、正しい判断ができないまま、アイヌ民族の方々を傷つける不適切な表現で放送してしまいました。アイヌ民族の皆様、ならびに関係者の皆様に深くお詫び申し上げるとともに、速やかに事例を社内に周知・検証し、研修を通じて再発防止に努めてまいります」
との謝罪コメントを出しています。
なお、アイヌ民族を差別する発言をした脳みそ夫さんは、13日時点で謝罪コメントなどは発表していません。
そして、『スッキリ』での不適切表現、その後の謝罪対応などに対してネット上では、
- スッキリでの不適切な発言だったら、スッキリで謝罪するべきじゃないの?
- 月曜日のスッキリでも再度謝罪しないとダメだよね。エブリー見てない人もいるんだし。
- 不適切発言をわざわざ最近株を上げてる藤井アナに謝罪させるとは、いかにも日テレらしい、いやらしい演出に嫌悪感しか感じない。
- 例えアイヌの人じゃ無くても、犬に例えられていい思いする人なんて居ないだろうに。
そんなことも分からないのに全国に向けて発信してるのか? - あっ!犬!どういう気持ちで言ってるかに関係なく、言われた方は不快。
アイヌ民族以外の民族の人に向かって、あっ!犬!なんて言えないし、なぞかけだからが言い訳にもならない。
この発言後も番組はいつも通り続いてたのが、不思議。アナウンサーの森さん、水トちゃんがいたのにスルーしたのは残念でした。
同じようなことで、読売テレビのtenでも不適切な発言があった時は瞬時に出演者の若一さんが反応しました。番組の進行より遥かに大事なこと。 - 道民で和人だけど、アイヌ系の人たちが回りにいる環境で育ったので、この「あ、いぬ」と言う侮蔑言葉は幾度となく耳にして育った。
こんなデリケートな問題を、何も知らぬ第三者がお笑いにするとは報道機関として最低です。 - 昔からアイヌへの差別発言として犬という言い方があったとは、自分は知りませんでした…無知なせいだと思いますが、まったく知らない人もいると思います。
かばう訳じゃないけど、、自分は最初この話を聞いた時、そんなに酷い事ってわからなかった… - 台本あるのか、自分で考えたのか分からないけど、考えた人は深く考えてはなかったと思います。
そういうからかいが侮辱につながることもあるので、本当に気をつけないと。
などの声が上がっています。
週刊誌『週刊女性』のWeb版『週刊女性PRIME』によれば、番組放送後にネット上で差別発言だと炎上して以降、日本テレビには抗議の電話・メールが1,000件以上寄せられたといい、そうしたことを受けて『news every.』で謝罪コメントを発表するに至ったそうです。
今回の件について全国紙放送担当記者は、「酷いことは、放送前に確認していなかったことを明かしたことです。日テレは約10年前に、報道番組の『真相報道バンキシャ』で“裏金虚偽証言”報道事件があり、社長が引責辞任をしました。その際、現場に厳命されたのは、事前チェックを必ず徹底すること、でした。『バンキシャ』のスタッフルームには新たなブースを設け、プロデューサーら数人で必ずオンエア前のチェックをしています。それを『スッキリ!』はしていなかったことを明かしてしまった。これは大問題ですよ。プロデューサーの責任はもちろんですが、経営陣の引責も考えなければならない。避けられないでしょうね」
と語っています。
このように、番組での「あ、犬(アイヌ)」という差別表現は、謝罪しただけでは決して許されない行為だと指摘されており、「担当者の無知」「事前チェックの手落ち」という言い訳も通用しないとしています。
差別表現をした問題の謎かけは、番組側が用意したものなのか、脳みそ夫さんが考えたものだったのかは不明ですが、生放送でポロッと出てしまったものではなく、事前チェックが可能なVTRだったにも関わらず、差別表現を流してしまったのはより深刻な問題だと思います。
もし、アイヌ民族と犬をかけることが、差別にあたるとは知らなかったとしても、人を動物で表現する差別発言は複数存在し、これはどうなのかと誰も思わなかったというのは疑問です。
今後また同様のトラブルが起きないように、改めて番組内容のチェック体制を見直していく必要があるでしょうね。