バラエティ番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にゲスト出演した女優・高畑淳子さん(たかはた・あつこ 69歳)が、職業差別を助長する恐れがある不適切な発言をしたとして、12日放送の番組内で原田葵アナウンサー(24)が謝罪し、この対応を巡りネット上で物議を醸しています。
問題となった不適切発言の内容は「牛の屠殺(とさつ)みたいに」との発言で、高畑淳子さんが20年以上前に更年期障害を発症時に、病院へ行った際のエピソードを披露した際、「(医師から)これはホルモンが無くなったんですね。お薬出しましょう。はい、次の方みたいに。(手を横に動かしながら)牛の屠殺みたいに…」
と語り、このトークに対して共演者たちは爆笑していました。
そして、12日放送の番組終了間際に原田葵アナが、「昨日のこの時間の放送で、ゲスト出演者が病院での診察についてのトークの中で、『牛の屠殺みたいに』と発言しました。これは、職業差別を助長する恐れのある不適切な表現でした。お詫びすると共に、この発言を取り消させて頂きます。大変申し訳ございませんでした」
と、発言を撤回し謝罪しました。
この対応に対してネット上では、
- アナウンサーではなく本人が謝罪すべきじゃないの?
- 敏感すぎる、言葉狩り、揚げ足取り、小さい器の奴ばかり
- テレビ局が自己保身に走り過ぎ
- 過敏になり過ぎていておかしいと思うのは私だけ? この言葉のどこが不適切なのか分からない。
言葉狩りで萎縮して何も言えなくなって、なんちゃら警察みたい - 屠殺業って歴史的背景の問題で過敏になりやすい業種ではあるからなぁ
- この言葉が差別的と捉えられているのは知らなかった。で、毎年膨大な数の家畜を殺しているのはなんと言うの?
- 牛の屠殺無くして食生活成り立たないのにそれを言う事がダメっておかしいだろ?
その仕事に従事する人の背景をタブー視する偏見がこういう言葉狩りになるんだよ - 屠殺発言は特に関西、西日本エリアだとアウトです。面倒くさい団体が出てくる場合あり
などの声が上がっています。
屠殺とは、食肉用や皮革用の家畜など動物を殺すことを指しますが、屠殺、屠殺場、屠殺人といったワードは差別用語にあたるとして、放送禁止用語となっています。
共同通信社が発行している『記者ハンドブック』(記者向けに記事の書き方、表記ルールなどをまとめた本)でも、屠殺を含むワードは差別語・不快用語に分類されています。
屠殺の言い換え語としてメディアが使用しているのは「食肉解体」や「食肉処理」などです。
屠殺が差別用語とされる原因は、かつて被差別部落の人々がこの仕事を担い、差別を受けてきたという歴史的背景があるためで、現代においてもこの仕事に従事する人たちへの偏見、差別は続いていることから、メディアでは使用禁止ワードになっています。
そのため、1989年に『NEWS23』(TBS系)でメインキャスターの筑紫哲也さんがビートたけしさんと対談した際、筑紫さんが屠殺場のワードを使ったことで謝罪しましたが、屠場労働組合から厳しい糾弾を受けました。
同年には、報道写真家・桑原史成さんが出版した著書の中で、「戦場という異常な状況下では、牛や豚など家畜の屠殺と同じような感覚になる」という記述があったことで問題視され、回収処分になるなどしています。
このように屠殺というワードは、被差別部落絡みでメディアなどでは禁句となっているので、フジテレビ側が視聴者等からクレームを受けて過剰に対応、自主規制したというわけではなく、当然とも言える対応ではあるのですが、これも一種の“言葉狩り”として疑問や批判的な声が上がるのは仕方がないかもしれません。