1994年4月から放送されている人気鑑定バラエティ番組『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京系 火曜20時54分)で、番組史上最大のお宝が発見されたと昨年12月に大きな話題になったのですが、あれは偽物だと異議を唱える人物が現れ物議を醸しています。
番組史上最大のお宝とされたのは、現時点では完全な形で世界に3点しか現存していないとされ、その全ては日本にあり国宝指定されている中国の陶器「曜変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん)」。
それが番組に持ち込まれたと様々なメディアによって伝えられ、放送前から大きな注目を集め、この日の番組の視聴率は前週から1.7%アップし13.5%を記録。
同時間帯に放送の人気バラエティ番組『マツコの知らない世界』(TBS系)に並び、同時間帯トップという数字でした。
このお宝の鑑定を依頼したのは、徳島県でラーメン店を営む56歳の男性で、曽祖父が戦国大名・三好長慶の子孫から買い取った骨董品の1つとのことでした。
<↓の画像が、番組に登場した「曜変天目茶碗」の写真>
そして、番組ではお馴染みの骨董商・古美術鑑定家の中島誠之助さん(78)が鑑定を行い、「『なんでも鑑定団』始まって、最大の発見ですね」「12世紀から13世紀、中国の南宋時代に福建省の建窯で焼かれた曜変天目に間違いございません」「信長、秀吉、徳川家康が持ってさらに現代に伝わっていれば、国宝になっていたかもしれない」「今日これが出たことによって、4点目が確認された」などと断言。
<↓の画像は、茶碗を鑑定する中島誠之助さんの写真>
さらに、「漆黒の地肌に、青みを帯びた虹のような虹彩がむらむらと湧き上がっていて、まるで宇宙の星雲を見るようです」と絶賛し、その鑑定額は「2,500万円」でした。
日本で国宝に指定されている「曜変天目茶碗」3点は、億単位とも言われていることから、この鑑定額に対しては「意外と安いな」という声も多く上がっていたのですが、国宝級のお宝発見ということで話題になりました。
しかし、このお宝に対して異議を唱える専門家が登場し、今後大きな騒動に発展する可能性が出てきています。
異議を唱えているのは、愛知県瀬戸市の陶芸家・九代目長江惣吉さんで、週刊誌『週刊ポスト』の取材に対して長江さんは、「番組を見ていて思わず絶句しました。どう見ても中国の商店街で売っているまがい物にしか見えなかった」と、あれは偽物に見えると語っています。
長江さんは2012年に中国で開催のシンポジウムにて、「曜変天目」の焼成方法に関する発表を行うなど、幻の陶器とされる「曜変天目茶碗」の完全再現を実現するために親子2代にわたって挑み、これまでに様々な調査を重ねてきた「曜変天目のプロ」とされる方です。
長江さんが、番組に登場した鑑定品が偽物であると判断した最大の根拠は「光彩」にあるといいます。
「曜変天目茶碗」の最大の特徴は器の内側の鮮やかな光彩にあり、光と見る角度によって輝き方が変わり、その輝きは「器の中に宇宙が見える」とも評されるのですが、長江さんは鑑定品には「肝心の輝きがない」と指摘。
長江さんは「そもそも“曜変”とは“光り輝き、変幻する”を意味します。本来、曜変天目の釉薬には天然材料が使われており、焼き方によって色合いが変化して、ブラックオパールのように鮮やかな光彩が発現します。」と説明。
<↓の画像は、国宝に指定されている曜変天目茶碗の写真>
それに比べて鑑定品は「変幻する光彩ではなく、単に赤、緑、青などの釉薬がそのまま発色したものに見える。これは東洋的な味わいに欠ける」と語っています。
また、鑑定品の色合いから「おそらく、ヨーロッパで18世紀以降に開発された陶磁器釉薬用絵具の『スピネル顔料』を塗り付けて発色させたもので、私は描彩天目と呼んでいます。時代からみても宋代の作品ではありません。器の外側に雲のような模様が出ていることも不可解です。」とし、鑑定品レベルの茶碗は「福建省の建窯周辺にある“倣製品工房”で大量に作られており、2000~3000円で購入できます」と語っています。
さらに、中国陶磁考古学・陶磁史の世界的権威であり、沖縄県立芸術大学教授の森達也さんも鑑定品について、「実物を見ていないのでその点は不正確ですが、映像を見た限りでは本物である可能性は低い」と語っているとのことです。
そして、これに対してネット上では、
- 美術品なんて鑑定士が「そうだ」っていえば本物になるんじゃない?
- これ、もし偽物だったら、中島さん大丈夫?ってなりますよね
- 一度、お三方と出品者さんが一堂に会し、全員で再鑑定をするしかない。それをテレ東で責任を持って放映するが良いのでは?
- NHKの番組見たけど、この茶碗の第一人者のような方だね。この方が迷うことなく違うというなら、違うんじゃないかな。テレ東もどこまで調べたのか知らんが、番組の信用に関わるよ。これをスルーするともっと信用下がるよ。
などのコメントが寄せられています。
鑑定品が偽物である可能性については『週刊文春』も報じており、長江さんが同誌の取材でも偽物であると指摘。
「曜変天目」を研究している美術館の学芸員も鑑定品について「正直、真贋を鑑定する以前の話かと思います。こんな土俵に乗ること自体が馬鹿らしい。」などと厳しく語っています。
同誌は、問題の器を鑑定した中島さんに話を聞くために何度も自宅を訪ねたものの、「この件について取材は受けないことにしています」と断れてしまったそうなのですが、奥さんが中島さんの代わりに「主人だけでなく、番組が別の専門家にも鑑定をお願いしていると聞いております」と回答したとのこと。
テレビ東京にも、鑑定結果の根拠、他の専門家の反論について質問をしたそうなのですが、「鑑定結果はあくまでも番組独自の見解によるものです。番組の制作過程を含め、この件について特にお答えすることはありません」と回答するのみだったそうです。
また、番組に鑑定を依頼した男性にも取材を行い、男性は本物なのかどうかは分からないものの、中国や台湾、日本の財閥などから鑑定品を売って欲しいという電話が掛かってくることを明かし、「本気かどうかは分からいけどね。一体どうしたものか」と話しているとし、現在は徳島市の教育委員会などが茶碗を調査しているといます。
鑑定を行った中島さんは、これまでに数多くの骨董品を見てきており、当然本物の「曜変天目茶碗」を見た上で本物だと断言したと思われるのですが、他の専門家たちが相次いで異議を唱えているところをみると、やはり偽物である可能性が非常に高いということなのでしょうかね。
番組側はこの件について回答を拒否しているそうで、今後番組で触られることは無さそうですが、現在は別の機関で調査を行っているとのことから、その結果に注目したいところです。