女子個人では前人未到の五輪4連覇を達成し、国民栄誉賞を授賞、ギネス世界記録に認定されたレスリングの伊調馨選手(いちょう・かおり 35歳)が『日刊スポーツ』の取材に応じ、東京五輪出場権を逃した場合、9月にも現役引退する意向を示しました。
伊調馨選手は6日に行われた世界選手権代表(女子57kg級)をかけたプレーオフで、リオデジャネイロ五輪(63kg級)の金メダリストで世界大会3連覇中の後輩・川井梨紗子選手(かわい・りさこ 24歳)と対決、惜しくも敗れたことによって自力での東京五輪出場は消滅しました。
<↓の画像は、伊調馨選手と川井梨紗子選手の写真>
2人は昨年12月の全日本選手権などでも対戦し、1次リーグでは川井梨紗子選手が伊調馨選手の連勝記録を70で止め(日本人選手が伊調選手に勝利したのは17年ぶり)、その後の決勝戦では伊調選手が逆転勝ち、今年6月の全日本選抜選手権では再び川井選手が勝利を収めていました。
そして、9月に行われる世界選手権で川井梨紗子選手がメダルを獲得すると東京五輪代表に内定し、伊調馨選手は他の階級への挑戦は考えていないため、東京五輪代表を逃した場合には現役引退し、引退後は指導者になることを視野に入れているといいます。
『日刊スポーツ』の取材に応じた伊調馨選手は、川井梨紗子選手が女子レスリング57kg級の東京五輪代表に決まった場合、第一線を退くのかという質問に対して「そうなると思います」と答え、他階級などで代表内定者が出ていない場合でも「(他階級挑戦は)無いです」とキッパリと否定し、すでに気持ちは固まっている様子だったとのことです。
そんな伊調馨選手は14日に行われた「デリシャススマイル杯東日本大学女子選手権」で、練習拠点としている日本体育大学(日体大)の現役選手たちのサポート役を務めており、セコンドに座って助言する場面もあったといい、後身たちに自身の技を教えるなど技術指導もすでに行っていて、9月に引退後はまず指導者になりそうだとしています。
日体大の松浪健四郎理事長は伊調馨選手について、現役引退後は日体大女子レスリング部の外部コーチとして招きたい意向で、「選手は伊調選手から学んで強くなっている。力になってほしい」と語っています。
一方の伊調馨選手は、「最近の女子はだんだんとレベルアップしている」「技術面でもそうですけど、意識改革だったり考え方、取り組み方を教えられるように、自分も勉強しなくてはいけない」
と語っています。
そして、伊調馨選手が現役引退の意向を示したことに対してネット上では、
- 後進育成に頑張ってください。世代交代は仕方のないこと。ここまでよく頑張ったな。ご苦労様でした。
- あのパワーハラスメント問題が無ければまた変わっていたと思います。
仮に引退したとしても、伊調選手の功績は凄いと思います。指導者になるにせよ頑張って欲しいです。 - パワハラ問題でゴタゴタし、本来ならもっと実績で騒がれないといけないのに。
吉田沙保里さんの影に隠れがちだが、東京五輪で五連覇を達成して、華々しく有終の美を飾って欲しいが、そのプレッシャーから開放されてもいいと思うし、悩ましいですね。ご本人の気持ちを尊重するしかないですね。 - 自分を負かすぐらい強い選手が出て来るまでしっかりと一線で走り続けたのは素晴らしい。
キャリア晩年の協会のゴタゴタは気の毒だけど、引き際としては最高に格好いいと思います。まだ引退したわけではないですが。 - 色々な苦難を乗り越えてここまで来たのだから、頑張って代表を勝ち取って欲しいが、もし駄目でもその後はいい人生を歩んで欲しい。
大きな実績があるのに、嫌なこと苦しかったことに対して多くを語らないところがカッコいいよ。 - オリンピック出れるといいですけどね。誰も成し得てない圧倒的な五連覇を見てみたいし、応援したいです。
環境が悪い中、レスリングを続けて四連覇はすごい偉業ですよ。私は、霊長類最強は伊調選手だと思いますけどね。
などのコメントが寄せられています。
伊調馨選手は昨年、恩師で元至学館大学レスリング部監督・栄和人さん(さかえ・かずひと 59歳)からのパワハラ被害問題が勃発、昨年10月の全日本女子オープン選手権で2年2ヶ月ぶりに実戦復帰して優勝を果たし、それから2ヶ月後の全日本選手権でも優勝を果たしました。
しかし、今年4月開催のアジア選手権では準決勝で敗れて3位に終わり、その後の全日本選抜選手権と世界選手権の代表選考プレーオフで川井梨紗子選手に負けるなどしていました。
伊調馨選手はリオデジャネイロ五輪後から2018年4月までの約2年間レスリングを離れ、その間にはOL生活も経験して五輪後から体重が約5kg落ちており、それから練習を重ね、階級を落として好成績を残せていたものの、やはりピーク時の状態には戻せなかったのか、年齢的なものも大きいのか、東京五輪代表をかけた試合で川井梨紗子選手に負けを喫し、結果が全ての世界なので、引退は仕方がないのかもしれませんね…。
もう一度五輪の舞台で伊調馨選手の姿を見たかったですが、東京五輪は自力での出場がすでに消滅しており、2024年のパリ五輪への挑戦もかなり難しいものがあるため、残念ではありますが現役引退となった場合には、自身のこれまでの経験や技を後身に伝えるなど、伊調選手だからこそできることをしてもらいたいですね。