8月25日から日本でも公開される『DCコミックス』の漫画を実写化した映画『ワンダーウーマン』の日本版イメージソングに、人気アイドルグループ・乃木坂46の楽曲『女は一人じゃ眠れない』が起用されており、同曲のMVは映画とリンクした内容になっているのですが、歌詞が映画の内容とあまりにもかけ離れているため、映画ファンらの間で批判の声が噴出しているようです。
『ワンダーウーマン』は、地上最大級の力や飛行能力などを持つ屈強なスーパーヒロインの活躍を描いた作品となっており、『DCコミックス』のスーパーヒーローチーム「ジャスティス・リーグ」の中では、スーパーマンやバットマンなどと肩を並べる重要なキャラクターです。
<8月25日公開の『ワンダーウーマン』>
また、フェミニズム(女性の社会・政治・法律上の拡張しようとする思想・運動)が重要な背景になっている作品で、「強い女性」「自立した女性」の象徴として用いられてきたキャラクターであり、2016年10月には国連名誉大使に任命されています。
そうした『ワンダーウーマン』の活躍を描いた実写映画の日本版イメージソングに、乃木坂46のニューシングル『逃げ水』のカップリング曲『女は一人じゃ眠れない』が起用されたのですが、この曲はタイトルからも分かるように自立した強い女性とは真逆の女性をイメージさせる内容となっており、「女はいつだって一人じゃ眠れない 恋が邪魔をしているよ どうする? 感情が動いて眠れない 胸のどこかが叫んでる 寂しくなんかないないない 誰かといたい」といった歌詞が登場します。
<↓の画像は、『女は一人じゃ眠れない』MVワンシーン>
- 乃木坂46 『女は一人じゃ眠れない』公式 Short Ver. MV(YouTube)
そうしたことから、『ワンダーウーマン』を高評価している映画評論家・町山智浩さんは自身のツイッター上で疑問を呈しており、
「『ワンダーウーマン』の日本でのイメージソングって『女は一人じゃ眠れない』っていうの? それって正反対のメッセージじゃないの?」
「『ワンダーウーマン』さえも“女は男がいないとダメ”という方向にもってっちゃうのか。」
「『ワンダーウーマン』のイメージソングとして“強がり言っても女はしょせん男がいなきゃダメなのよ”という歌を男が作り、女に歌わせる悪夢。」などとツイートしています。
<↓の画像は、町山智浩さんのツイート>
なお、ニュースサイト『ねとらぼ』が町山智浩さんにツイートの真意について話を聞いたところ、「映画『ワンダーウーマン』は『ローマの休日』を基に“生涯にただ一度の真実の愛を通して人類愛(ヒューマニズム)にいたる物語”です。だからオリジナルのシーアの主題歌は“人間であることは愛すること”という歌詞なのです。“女はひとりで眠れない”という言葉の生臭さとまったく逆のテーマなんです」「歌わされる彼女たちがかわいそうです。50歳を過ぎた男性が若い女性に“女ってのはひとりで眠れないんだよ”と言っている姿を想像してください。うっかりすると自分もそういうキモいおっさんになりがちなので自戒を込めて。」と語っています。
そして、この件に対してネット上の反応を見てみると、
- 炎上商法
- 吹き替え版主題歌EXILEとAKB系列は地雷
- 先進国の自立した女性のイメージと真逆じゃん これだから日本は…もうね、馬鹿かと どんだけ人権後進国だよ
- これはDCワンダーウーマンのテーマから外れる最悪のコラボだろ…何でこう日本は古臭いジェンダー感を洋画にまで押し付けるんだよ 勘弁してくれよ
- そもそも日本版イメージソングのタイアップなんていらない・・・ましてや乃木坂・・・意味がよく分からない・・・・
- 乃木坂も関ジャニ∞も洋画に無理矢理に映画の世界観とそぐわない歌をイメージ曲と言えばなんでもタイアップできると日本の配給会社が考えているのがおかしい
- せっかくのいい映画を見終わった後のスタッフロールの曲に、こんなの流れたらたまったもんじゃないよな。全部ぶちこわし。
- どこの映画会社でも同じだけど、日本に入ってくるときに改変しすぎ。確かに日本でヒット飛ばしたい気持ちはわかるけど、見たときに違和感を覚えるキャッチを飛ばすところが本当に多い。主題歌もそう。ちょっと売れてる歌手をすぐ使うけど、映画を見に来ているのであって歌手の歌を聴きにきてるわけじゃない。映画を配信するならそのイメージにあった人を使ってほしい。
- 好きなアイドルが主題歌を歌うから観る、なんて人がそんなにいるのかな 楽しみにしてた映画が台無しにされたって怒る人を蔑ろにしてまですることかね
などのコメントが寄せられています。
『女は一人じゃ眠れない』の作詞を手掛けているのが総合プロデューサーの秋元康さんなので、これも話題作りのための炎上商法という可能性がありますが、ここまで映画の内容とイメージソングの歌詞がかけ離れていると世界観を壊してしまうなどの問題があり、グループにも悪影響を及ぼすことも考えられるので、もし炎上商法だったとしたらほどほどにしてほしいものですね…。
ちなみに、秋元康さんが作詞の楽曲については、これまでに何度か騒動を巻き起こしており、昨年4月にHKT48がリリースしたシングルに収録の楽曲『アインシュタインよりディアナ・アグロン』も、「女性蔑視だ」「女性に対する侮辱の塊」「何回見ても気持ち悪い歌詞」といった批判の声が噴出する事態になりました。
また、欅坂46が今年7月にリリースした1stアルバム収録の『月曜日の朝、スカートを切られた』についても、タイトルと歌詞の内容に批判の声が上がっています。
秋元康さんは以前から楽曲の歌詞で、ステレオタイプな女性像、女性蔑視と感じられる表現を多々用いているのですが、昔なら許された偏った男性目線の歌詞内容は今では大きな問題に発展する可能性もあるので、その点を踏まえて作詞をしていってほしいですね。